新旧ポルシェのタルガルーフを突き詰める│クラシックの魅力とは?

 Photography:Paul Harmer


 
筆者がまずステアリングを握ったのはアイボリーホワイトの外装、ブラック内装、スポーツシートを組み合わせた、1973年式のタルガ2.7Sである。自宅を出て、ワインディングロードを駆け抜けて集合場所に着いた頃には、その軽い身のこなしに正直、驚いた。遠慮のないデルウィンは、筆者の到着を見るやいなや、早速、独自の見解を述べてくれた。
 
「昔、タルガは好きじゃなかったが(小生意気に聞こえるが、デルウィンはRSのオーナーだ)、時間の経過とともにノスタルジックの度合いが増して、自分の見方も変わってきたように感じる。ルーフのラインがクーペとは異なるけど、もうさほど気にならなくなったな。しかも、現行モデルと比べたときのコンパクトさはた
まらないね」 

このタルガは、つい最近、オーストラリアのクラシック・スロットル・ショップから輸入されたもので、イギリスには10台しか現存しない1973年式のうちの1台だ。前述の"見解"で示されたようにボディサイズはコンパクトで、車重はわずか1080㎏しかない。40年ちょっとの年月を経て、現行タルガ4Sは1555㎏に成長してしまった。前者はメカニカル、後者はハイテクの集合体と片付けられがちだが、果たして2台には共通する血が流れているのだろうか。
 
筆者はデルウィンとは違い、昔からクラシック・タルガが好みだった。理由は、ここだけの話だが、同時期のクーペはどうも殺風景過ぎるように感じていたのだ。ついでに言えば、だからこそグリーンやオレンジといった原色系のボディカラーが流行ったのではないかと考えている。クーペは良くも悪くも走りに対してストイックだったが、それに比べてタルガは大人の"色気"を感じさせてくれる。
 
アルプスの峠を越えるような道、コートダジュールの海岸沿いの道…と、遊び心とゆとりある風景のなかを走るタルガの姿が容易に想像できる。
 
クラシック・タルガのルーフは、フロントウィンドウ上部にある2個のロックで固定されている。ファブリック製ルーフはひとりでも取り外しが可能で、折り畳めばフロントのトランクに収まる。だが、現行タルガのルーフを開閉するのが19秒で済むのに対して、クラシック・タルガでは1分はかかる。とはいえ苦になるような儀式でもなくむしろ、味わい深い流儀のような雰囲気だ。
 
1973年式の911タルガ2.4には、3つのパワーバリエーションが用意されていた。最高出力131psの"T"、167psの"E"、そして今回のテスト車両は192psの"S"である。私は個人的に、"S"を"純正ホットロッド"と呼んでいる。軽量フライホイールのおかげで、エンジンレスポンスの鋭さは群を抜いている。クラッチは"スポーツカー"として身構えるような重さではなく、むしろ「軽い」と評していいだろう。シフトストロークはハッキリ言って、長い。
 

編集翻訳:古賀 貴司 Transcreation:Takashi KOGA Words:Robert Coucher

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