新旧ポルシェのタルガルーフを突き詰める│クラシックの魅力とは?

 Photography:Paul Harmer


 
最新の水冷フラットシックスが発揮する加速力は強烈だ。0-60mph(96㎞/h)加速が4.4秒、最高速は288㎞/hに達する。エグゾースト音はフラップが開くと爆音を奏でるが、それは水平対向エンジンというよりはV6サウンドに近い。そういう意味では、もはやかつての"ポルシェらしい"サウンドは失われている。時代の流れであることは理解しつつも、一抹の寂しさを覚える。
 
タルガ4Sのルーフを開けて走ると、驚くなかれクラシック・タルガよりも風切り音が大きい。だが、遮音加工が施されたルーフゆえにクローズにするとクーペと同等の静けさが得られる。美しい曲線を描くリアフェンダーは、サイドミラー越しに見ても惚れ惚れする。しかし、イギリスの道路では車線いっぱいに広がっているように感じられ、運転中にはかなり気を使った。また、図太いAピラーの死角も気になった。それに比べてクラシック・タルガはコンパクトで運転しやすい。
 
ドライバーズシートの下が"軸"になっているかのような車両の動き、正確無比なステアリングレスポンスはクラシック・タルガから脈々と続いている。ブレーキは強力で、複雑なマルチリンクサスペンションによって路面を這うように走る。また、足回りはクーペよりもソフトなセッティングが施されているので、乗り心地はすこぶる快適だ。なお、タルガはすべてのグレードが4WD仕様だが、なぜ4WDのみの設定なのか筆者にはわからない。
 
タルガ4Sはクーペ4Sに比べて150㎏ほど重いが、何ら不満ない走りを披露してくれる。普通のタルガ4でも十分だろう。個人的には7速MTはやや煩雑に思え(慣れれば大丈夫だろうが)、自分で選ぶならPDK搭載車にする。
 
タルガ4Sは脈々と続く911のDNAを受け継ぎながらも、ユーザーフレンドリーに進化している。もちろん、その姿勢を批判するつもりはなく、絶対的性能での優秀さに異論を唱えるつもりはない。ただ、個人的にはもっと強烈な911らしい個性が欲しいと思う。もっとも、これは筆者のなかにできあがってしまった"911像"があるからなのだが。 

対するクラシック・タルガは、まさに筆者の理想とする911であった。走りにピュアで、しなやかで、驚くほど扱いやすく、筆者にとっては十分速い。そして、今でも人馬一体感を味わうことができる。空冷フラットシックスのサウンドは筆者にとっては世界最高のオーケストラであり、毎日の足としても使うことができる。筆者にとっては、ルーフが開くタルガはボーナスのようなものだ。
 
私にどちらを選ぶかと問われれば、迷わずクラシック・タルガだ。そう、迷うことはない。あまりに気に入ったので、この試乗車である2.4Sタルガを購入してしまった。

編集翻訳:古賀 貴司 Transcreation:Takashi KOGA Words:Robert Coucher

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