ミスター・ビーンがマクラーレン F1とポルシェ カレラGTを乗り比べる

Photography: David Shepherd



もとい。そんなアンディがステアリングを握ったゾンダ、F1に通じるコンセプトのシンプルさを気に入った。しかし、F1のライバルと認めるに至らなかったのは、ブランド統一性の欠如(エンジンは十二分にパワフルだったが、あそこまでデカデカとメルセデス・ベンツAMGと主張されても…)、そしてエキセントリックなリアのデザインだった。

そうこうして10年が経ち、ようやくF1のライバルと認めるに足りるポルシェ・カレラGTがお目見えした。オールカーボン、自然吸気エンジンをミドに搭載し、6段MTと組み合わせるという、なかなか素晴らしいパッケージングだった。エンジンがポルシェ製というのもスッキリする。そして、ほかのモデルに搭載されている水平対向ユニットをモディファイしたのではなく、GTレースへの参戦を前提に開発されていた(計画はキャンセルになった)エンジンをルーツとする、5.7リッターのV型10気筒を搭載することも魅力だった。エクステリアには少しだけケバケバしさがあるものの、概ね美しいデザインに仕上げられた一台だった。

あえて指摘するなら、取り外し可能なルーフの存在はいかがと思った。これに関してはまったくの個人的趣味で、私はコンバーチブルが嫌いなのだ。運転中に周囲から見られることを快く思わないし、とにかく風の巻き込みも嫌いだ。聞くところによると80mph(128㎞/h)以上での風の巻き込み量は相当なものだという。カツラや増毛には相当厳しいらしい(私のことではない)ので、今回のテスト走行では、終始ルーフを装着したままにしておいた。ルーフがあるほうがカッコいいと思うのだ。ただ、このルーフパネルには専用の収納袋が用意されており、取り外した際は綺麗にフロントのボンネット内に収まるように設計されている。こういった"抜かりなさ"は、カレラGTのあらゆる場面で感じる。

インテリアのどの部分に触れてみても、エンジンルーム内を覗き込むだけでも精緻な雰囲気が伝わってくる。おおよそマクラーレンの高い完成度に近いと言ってもいいだろう。インテリアにおける本革、アルミ、カーボンファイバーの組み合わせはとにかく美しい。なかには911からのメーターパネルの流用を快く思わない人もいるそうだが、私はそもそもポルシェに詳しくないので気にならなかった。ただ、F1と比べると見にくいことは記しておく。

サイドシルは図太いが、カレラGTへの乗り降りはF1よりもはるかに楽だ。

F1の操作マニュアルには「車に乗り込む」という項目で2ページが費やされており、当然ながら「車から降りる」という項目でも2ページが費やされている。それぞれの項目ではイラストが用いられている。マニュアルではサイドシル、助手席、そしてシャシーレールという3個も障害物を一気に跨いでドライバーズシートに座るよう書かれている。そんなことができるのはイラスト内の世界だけだ。私の乗り方は、まず助手席に座り、シャシーレールを片足ずつ跨ぎ、最後にヒップを移動させる。歳を重ねると、この儀式が億劫になる。

シフトノブは運転席右側に配されているので、乗り降りは左側からとなる。

編集翻訳:古賀 貴司 Transcreation: Takashi KOGA Words: Rowan Atkinson 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事