「シトロエンならでは」心地良さのメカニズム

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シトロエンが生み出した技術を代表するのが、通称「ハイドロ」と呼ばれるサスペンションシステムだ。液体と気体を用いたシステムで、むくっと上がる車高と、ふわふわとした独特な乗り心地の良さを生み出すのだ。年シトロエンを象徴するメカニズムであり続けてきた、ハイドロニューマティックとハイドラクティブ。ここでは2つのサスペンションを総称し、親しみを込めて「ハイドロ」と呼ぶことにする。
 
ハイドロは、金属バネとダンパーの代わりにエアとオイルを詰めたスフェアと呼ばれる球を装着したもので、スフェアの上半分に密封されたエアがスプリング、下半分の入り口にあるバルブをオイルが通過することでダンピングを行っていた。
 
オイルはエンジン駆動のポンプで発生した油圧をアキュムレーターで一定レベルにした後、各スフェアに送っており、サスペンションが沈み込んだ際にはオイルを補充して車高や姿勢を一定に保った。運転席のレバーで任意に車高を変えることも可能だった。
 
このハイドロを本格採用したのは1955年発表のDSで、サスペンションのみならずブレーキとステアリングのパワーアシスト、ギアボックス操作も同じ油圧でまかなった。
 
ブレーキは通常の車のようにオイルを押し出すのではなく、オイルを流す構造だったためストローク感はほとんどなく、スイッチのような感触だった。一方のパワーステアリングは、サスペンションやブレーキと油圧を共用している点を除けば、他の油圧式と基本的に変わらない。
 
ギアボックスは遠心クラッチと油圧制御MTを組み合わせたもので、発進は遠心クラッチが受け持つ。変速はアクセルから足を離すと同時にシフトレバーを動かすとクラッチが切れ、油圧回路がギアボックスを動かし、レバーが次のポジションに行くと再びクラッチがつながる。
 
ただしこのトランスミッションが装備されたのはDSだけだった。一方1970年登場のSMでは、速度可変式パワーセンタリング・ステアリングが採用された。速度に応じて操舵力が重くなるだけでなく、切った後には自動的に直進位置に戻る機構を盛り込んだ、意欲的な内容だった。
 
1989年発表のXMでは、電子制御のハイドラクティブサスペンションに進化している。前後とも左右輪の間に第三のスフェアを持ち、ここへの油圧回路を開閉することでサスペンションの硬さを変えた。当初はスポーツモードはハード側固定だったが、1993年発表のエクザンティアからはハード側への移行を早める設定に変わり、ハイドラクティブⅡと呼ばれた。
 
このエグザンティアが2000年、C5に進化すると、ハイドラクティブもⅢ型にスイッチした。ブレーキやステアリングの油圧をシステムから切り離し、油圧ポンプや車高調節機構に電子制御を導入することで信頼性を向上していた。
 
5年後に誕生したC6には進化型のハイドラクティブⅢプラスが搭載され、3年後にはC5も全面変更でⅢプラスにアップデートしている。これがハイドラクティブの最終型になったが、入れ替わるようにシトロエンは2018年、C4カクタスのマイナーチェンジとともにプログレッシブ・ハイドロリック・クッションを発表する。
 
既存のバンプストップラバーに代え、伸び側と縮み側の双方に効く油圧式クッションを配したもので、続いて登場したC5エアクロスにも装備された。しっかりハイドロの文字が入っているのは、DS以来の系譜を受け継ぐ存在だからだろう。第3章に入ったハイドロの今後に期待したい。

文:森口将之 Words:Masayuki MORIGUCHI

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