4気筒を搭載したシトロエンの優美な小型乗用車│女性ユーザーを意識?

PEUGEOT CITROEN JAPON

タイプB2が発売された翌年、1922年にタイプCが誕生する。タイプCは課税馬力が5CVとなる小型のモデルで、今でも5CVと呼ばれることがあるが、例によって当時のシトロエンは5HPとして販売した。
 
どれくらい小さいかというと、ホイールベースはひと昔前の軽自動車並の2250mmで、車重は約550kg、エンジン排気量は856ccしかなかった。ただし4気筒であり、タイプCはB2と同じような一人前の設計でつくられているのがポイントだった。当時のフランスには、弱小メーカーがつくった、簡易的で奇妙な設計であることも多いサイクルカーがたくさん走っていた。それに対して、タイプCは大手メーカーがつくった小型自動車の真打というような存在として、世に現れたのだった。


 
タイプCと同時期にイギリスではオースティン・セヴンが登場している。オースチンは当初は2気筒を検討していたが、フランスのシトロエンの動向を見て4気筒に変更したといわれる。元来はこのサイズなら2気筒と考えてもおかしくなかった。オースチンの場合は4人乗りにしてファミリーカーにもなったが、タイプCは2人、もしくは3人乗りだった。

後にホイールベースが2350mmのC3に発展するが、それでも3人乗りだった。タイプCは直列4気筒を縦置きしているにしても、ノーズが長めの印象で、優雅なスタイルであることがひとつの売りになっていた。タイプCは女性ユーザーを意識しており、生活の役には立っても実用本位のファミリーカーではなく、女性が優雅に買い物などにも行けるような小型車だった。
 
とはいえ、タイプCはやや大げさにいえばフランスのT型フォードのような存在でもあり、計約8万台と、1500万台のT型に比べればささやかではあるが、自動車の普及に貢献した。当初の価格はB2が1万5500フランに対し、6700フランと半額以下であった。


 
タイプCは黄色がトレードマークだった。フランス語でレモンのことをシトロン(Citron)というが、それをCitroënと掛けたのである。ちなみにドイツのオペルでタイプCをまねした車がつくられたが、それは緑色に塗られたのでアマガエルのあだ名がついた。

文:武田 隆 Words:Takashi TAKEDA

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