ポルシェの進化を如実に物語る4台を一挙に比較!│第一弾 356B カレラ2

Photography: Charlie Magee



"ビートル臭"を抑えて豪華な雰囲気を醸し出す装備としては、ヘッドレスト付きレザーシートやウッド・リムのステアリングホイールなどが挙げられるが、ホーンを鳴らすリングはいかにも"ビートル風"だ。 珠玉のエンジンを始動すると、あたりに独特のサウンドが響き渡った。まるでスポーツ・エグゾーストを取り付けたビートルのようで、ガチャガチャというメカニカルノイズがより深く、よく響く音色に縁取りを与えている。ウォータージャケットを持たないフラット4は、どうしても金属音が強調されるようだ。

私はこれまでに、コンバーチブルのカレラを含むいくつものタイプの356に試乗してきたが、コンディションのいい車はいつも単なるパーツの集積体を越えた素晴らしい感動を生み出してくれる。このカレラ2 の場合も、最高のエンジンとピュアなクーペボディが理想的なハーモニーを生み出していた。
 
エンジン回転数を上げると"ビートルネス"はすぐに消え去り、4000rpmを越えればスイートスポットに入って緊張感のあるサウンドを響かせるようになる。レッドゾーンは6200rpmから始まり、7000rpmで終わる。これを見れば、誰もが「レヴカウンターの目盛りが終わる8000rpmまで回すとどんな喜びが待っているのか?」と想像を巡らすだろうが、そのような危険を冒さなくてもこのエンジンは十分なパワーを発揮してくれる。シフトフィーリングは協力的かつ寛容なもので、正確さの点で傑出しているとはいえないものの目指すギアを素早く選択できる。1963 年当時は正真正銘のハイパフォーマンスカーだったはずだが、いま乗っても十分に俊敏な走りが楽しめることだろう。


 
いっぽうで、シャシーがもたらす感触はいささか時代を感じさせるものだった。路面のカントや傾斜がひっきりなしに変化するランボーン・ダウンズ( Lambourn Downs )の道で、356はときに右や左に、ときには上に下へと進路を変えたがった。その程度はひどくないが、おかげでステアリングの"あそび"の範囲内で右へ左へと常に操舵しなければいけない。

果たして、後期型の356もこんな癖を持っていたのか? いますぐには思い出すことができないが、スムーズな路面にあわせて車高を落としている関係で、スイング・アクスルに起因するオーバーステアの発生が遅れがちのようにも思われた。同様にして、アンジュレーションの強い路面ではサスペンション・ジオメトリーが適正範囲を外れているらしく、私たちが試乗を行ったエリアではしばしばバンプストップにタッチしている様子がうかがわれた。

走りが軽快で魅惑的な外観を持つこの356が、一般公道上で本来の輝きを取り戻すのはさして難しくないはずだ。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation: Tatsuya OTANI Words: John Simister  

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