貴重なクラシックランボルギーニをいざ走らせる!│そのドライビングフィールは?

Photography:Tim Andrew

この記事は、最もレアなランボルギーニのクラシックモデル?試乗して分かった残念なことの続きです。

リチャード・ヘッドのシルエットは1977年12月17日にドイツの有名なランボルギーニ・ディーラーで元レーシングドライバー(BMWツーリングカーやマーチF1など)のヒューベルト・ハーネへと送りだされた車そのものだ。


1980年代半ばまでにはアメリカへと渡り、走行距離をわずかに重ねたのみでプライベート・コレクションに収まった。2007年に売却され、その3年後に英国へやってくる。アメリカで人気の色=赤に塗り替えられていた(なんとも野暮な話じゃないか)ものを14年にリチャードが購入すると、彼はすぐにオリジナルのラメ・コロラドとタン内装へ戻したのだった。イタリアにナショナル・トラストのような団体があるのだとしたら、何としてもリチャードを表彰しておくべきだろう。
 
トリムがレストアされたものであるとはもはや誰も思わないだろうし、シートはそれ自体がまるで芸術品のようで、茶色のセンターラインの入ったスペース・エイジ風2トーンバケットシートが70年代の作品であることを思い出させる。ヘッドレストには2個のスピーカーが仕込まれていて、アルパイン製CM−620ラジオカセットの奏でる音をステレオで聞かせる仕組みだ。このフロアマットがオリジナルデザインであるかどうか寡聞にして知らないが、そうであっても決しておかしくないと思う。マルチカラーの麻製マットで、インテリアの雰囲気にもよくマッチしていたからだ。
 
おそらく読者が最も注目するのはユニークなデザインのステアリングホイールだろう。ウラッコ用と同じもので、直径は10インチほど、ディッシュの深さもそれに近く、1968年に登場したコンセプトカーのアルファロメオ・カラーボのそれを彷彿とさせるが、これがまた見掛けによらずとても使い勝手がいい。ダッシュボード近くのセンターハブから4本のスポークがドライバー側へと伸びていて、計器類への視界が遮られることがなく、リムもまた速度計と回転計を、他の隣接する補機メーター類からちょうど分け隔てて見せてくれている。もっとも、インストルメントパネル中央に集中する各種トグルスイッチをオンにすると、表示がよく見えなくなってしまい、いったいそれが何のスイッチだったか分からなくなってしまうことが難点といえば難点だが。


 
シルエットの3リッター V8エンジンはウラッコからのキャリーオーバー。当初はウラッコP250用の2.5リッターV8 SOHCとして誕生したエンジンで、1975年には改良を受け3リッターV8DOHCへと進化し、ウラッコP300に搭載されていた。P250でトラブルの元凶であったベルト駆動のカムシャフトはチェーン式へと改められている。横置きされたエンジンとトランスミッションはもちろんランボルギーニ製であり、天才エンジニア、パオロ・スタンツァーニの設計である。
 
シルエットのいくつかある奇妙な特徴のひとつに、エンジンカバーの内側に配置された給油口を挙げておこう。V8エンジンが調子良く回って熱くなっているときに、決してガソリンをぶちまけたりしないように!
 
さぁ、エンジンを掛け、ギアを一速に入れて、走り出そうじゃないか。
 
ライバルであるフェラーリ308GTB、否、正確を期すればGTSと同じく、シルエットもまたゲートで区切られたメタルベースから、"にょっきり"と高くそびえるクロームのシフトレバーを備えている。308ほどの精緻さは望むべくもないけれど、それでも変速が上手くきまったときに響く金属音はたまらなく心地いい。



V8エンジンそのものもフェラーリのそれとは随分と違ったキャラクターをもっている。リチャードのシルエットをドライブしたのは、ちょうどグッドウッドで戦闘機のスピットファイアが低空飛行を見物した翌日のことで、私のメモには"低回転域におけるシルエットのV8ノートは、スピットファイアのそれと実によく似た脈動でドキマギさせた"と記されていた。たまたまそのあと、まさに同じ車のインプレッションを雑誌『Evo』でも見つけたのだが、そこにはこう記してあった。

「もし貴方のすぐ脇をランボルギーニ・シルエットが駆けぬけたとしたなら、P-51マスタングが低空飛行で通り過ぎたか、とでも思うに違いない」


・・・最終回へ続く

編集翻訳:西川 淳 Transcreation:Jun NISHIKAWA Words:Mark Dixon Photography:Tim Andrew

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