北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第5回 シトロエン2CVとVWビートル徹底比較(その3)





ちなみに2CVはキャンバストップなので屋根が開く。開け方には2つの方式が存在しているが、こちらはロック2つで簡単に開けられ確実に閉められる改良型のほうである。スペシアルに使われていた昔からのタイプはツメを引っかけることで閉めるのだが、筆者はこれを高速道路走行中に飛ばしてしまったことがある。ドカーン、という音とともに暴風が吹き荒れ、バックミラーを見るとマントのように幌がはためいていた。自分も驚いたが後ろを走っていた車はもっと驚いたに違いない。



キャンバストップには軽量化のためとか室内の音を外に逃すため、などという設計上の理由もあるのだが、理屈抜きで屋根が開くのは素晴らしい。フロントウインドウ上端が低いこともあって、下手なオープンカーより気分は出る。



2CVのシートの前後調整はシート下のレバーを上げながらスライドさせるのだが、動きがギクシャクしてとてもやりづらい。チャールストンや正規モノのスペシアルのフロントシートはセパレート式なのでまだ良いのだが、うちのスペシアルは左右一体のベンチシートなので、非常に難儀する。 

そして背もたれの角度調整はできない(一部可能なものもある)。ここまでビートルに比べるといいところ(?)の少ない2CVだが、シートベルトは1990年モデルだけに自動巻き取り式だ。ビートルから乗り換えると最大に嬉しいポイントである。自由とは素晴らしい。



2CVのリアシートは折りたたむことはできない。その代わり簡単に外すことができる。アウトドアの際に素敵なベンチ代りになる、という雑誌の記述をみたことがあるが、たぶんその書き手の方は写真だけで妄想が広がったのだろう。実際は写真のように座面が低いので足が浮いて少々座りづらく、とてもじゃないが素敵という形容はできない。

シートを外せばラゲッジスペースは相当広がる。もちろんリアシートが付いたままでもビートルよりは遥かに広い。じゃがいもをたくさん載せることができる、という元々の設計思想がこんなところにも反映されているのだ。

前回の走り編でも書いたが、ビートルのすごいところは今日の車と同じように扱うことができる普遍性の高さだ。それはドアの開け閉め、シートの調整など、操作系の設計にも同じことが言える。

一方の2CVは、ドアキーの操作方法からドアや窓の開け閉め、シートの調整まで何もかもが今日の車と異なっていて慣れが必要だ。しかし、それはそれでクラシックな車を扱う楽しさに満ちあふれていると言うこともできる。同じ時代に同じような時代背景から生まれ、同じように多くの人に愛されたビートルと2CVだが、やはりこの2台は似ているようで似ていない。 

次回は、この2台を実際に運転するにあたっての操作性についてリポートしよう。結論は見えている気もするが、運転しやすいのはどちらなのか!




*この記事は2016年1月から2月にかけて別媒体に掲載されたものを再編集しています。

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事