現実を超えた先にある体験価値とは│『グランツーリスモ』考案者に聞くデジタル世界の可能性

Gran Turismo Sport:TM & © Sony Interactive Entertainment Inc.

すでに3年ほど前のことになるが、インターネットで漫然と自動車写真を検索していて、ある写真に出くわした。それはアメリカのアリゾナ州にあるザ・ウェーブと呼ばれる独特の地形をもつ秘境に、WECを走るマシンが静止している写真だった。2021年、ついにこの写真の出典である『グランツーリスモ 』シリーズの7代目が準備されているようだ。まだ大半の情報が秘匿とされるなか、ポリフォニー・デジタル代表の山内一典さんに自動車ジャーナリスト、渡辺敏史がインタビューした。

1997年に登場し、いまやドライビングシミュレーターの代表的存在となった『グランツーリスモ』シリーズ。その草案から最新シリーズまでを作り上げてきた山内氏が見るデジタル世界と、その可能性について伺った。



ーまずはグランツーリスモ7について伺います。現世代から次世代へと向かう中でなにが進化するのか、という点において、ハードウェアの刷新というところが大きく関わってくると思うんですが、どうでしょう。

山内 PS4からPS5への進化において、我々が待ち望んでいたのは、リアルタイムのパストレーシングが実現出来ることです。パストレーシングはレイトレーシングとも言われるCGのシミュレート手法で、光源に対する被写体の反射や映り込みを忠実に反映するものです。映画用のCGでは昔からあるものですが、これをビデオゲームコンソールの中で、リアルタイムで動かすために必要な計算パワーはなかなか得られなかった。PS5でいよいよそれを超えることが出来たことで、表現力が大きく向上しました。

「ソニーと共同開発したHDR・ワイドカラーキャプチャ専用デバイスを用いて、素材制作からアウトプットまで、全ワークフローを通じて、物理的に正確な真のHDR、ワイドカラープロセスを用いて制作(グランツーリスモスポーツ)」された画像は、山内氏をして「ほぼ出したい色が出せるだけのレベルに到達しつつある」とのこと。

「ブランドセントラル」と名付けられた(グランツーリスモ スポーツ)コーナーではそのメーカー・ブランドの成り立ちから歴史を知ることができ、車両一台一台の諸元を確認することもできる。自動車メーカーと連携して実車を登場させ、ゲームのみならず自動車文化そのものを共有できることも魅力だ。

─YouTube等で公開されたグランツーリスモ7のビデオトレーラーをみると、メッキ部品の輝きやガラスの透明感といったところが大きく変わった気がしました。シズル感的なところが劇的に進化したというか。

山内 まさにそれがリアルタイムのパストレーシングの恩恵です。世の中の景色の中で、ツルツルピカピカの物体って多くは自動車なんですよね。金属やガラスを多用していて、綺麗に塗装も施されている。そういうグロッシィなものをリアルに表現する上で、殊更に効果が期待できるんです。

─プレイステーションと共に四半世紀近くに渡って進化してきたグランツーリスモシリーズですが、ブレイクスルーのポイントもあったかと思います。

山内 グランツーリスモというタイトルは我々としてはアバンギャルドなものだと思っていて、代が変わるごとに意識的に何かしらの新しい挑戦を盛り込んできました。だから各々のシリーズにファンがいてくれるんですが、時にはその変化がユーザーを戸惑わせてしまったこともあったようです。たとえば現在販売しているグランツーリスモ・スポーツは、初のオンライン専用として本格的eスポーツに挑戦したわけですが、人によっては相当突飛な印象を受けたかもしれません。結果的に950万人のユーザーを獲得することになりましたが、最初から爆発的に売れたわけではなく、3年がかりでじわじわと理解が進んで支持が増えていったという感じでしたね。


文:渡辺敏史 Words:Toshifumi WATANABE  Gran Turismo Sport:TM & © Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc.

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