北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│ 第20回 ビートルとの対決、再び! その2

Yoshisuke MAYUMI

ちょっと古いイタフラ車を中心にした「都筑スマイルカフェミーティング(TSCM)」「アツギスマイルカフェミーティング(ASCM)」を主宰するサイトーさん。1964年VWビートル、1971年フィアット500、1973年ホンダZ、1987年シトロエン2CV、1993年ローバーミニ、そして2002年ルノーカングーを所有する一風変わったカーガイである。

そんな、2CVの良さもビートルの良さも知るサイトーさんが「音」にもこだわりがあることを知った筆者は、兼ねてから疑問に思っていたことを思い切ってぶつけてみた。

「ビートルのエンジン音っていいと思いますか?」

サイトーさんが少し考えてから答えを話してくれた。そして筆者は戦慄した。

「ビートルのエンジンは、ハーレーに音と振動が似ているんだよね」

ビートルのエンジンを散々ディスってきた筆者は、つまり全世界の空冷フラット4愛好家のみならず、全世界のハーレー愛好家まで敵にまわしていたというわけだ。

ああ、よりによってハーレーとは!アリゾナあたりの砂漠のフリーウェイで、ハーレーの大群が土煙を上げて自分目がけ襲いかかってくる情景が目に浮かんだ。乗っている人たちはもちろんロン毛を束ねて口髭を生やしたワイルドな連中だ。

筆者がそんな妄想と戦っている間もサイトーさんは語り続けていた。若い頃はバイクにのめり込んだこと。ロードバイクを乗り継いだがスピードが怖くなって、ゆっくり走っても楽しめるハーレーに行き着いたこと。子供が生まれてバイクから車に乗り換えて、最初はマツダロードスターを手に入れたこと。そしてハーレーと同じ空冷OHVの音が似ているビートルにたどり着いたこと。



ゆっくり走って楽しい。確かにビートルもハーレーも、エンジンをぶん回し、目を三角にして走らせる乗り物ではない。2CVはのんびり走っても楽しいが、やはりエンジンを高回転まで引っ張って、ボディを傾けながらコーナーを駆け抜ける方がリズムに合っている。

そろそろ結論を聞こう。サイトーさんはビートルと2CVのどちらが好きなのか。ちなみに筆者は何度もいうが2CVの方が好きだ。



「どちらもいいところがあるかな。おもしろいのは2CV、車の動きが分かりやすい。ヤマハのSR400みたいな排気音が心地よいよね」

「ビートルには圧倒的な信頼感と安心感がある。旅をするならビートルが良いね。スピード域も高いし、やはりハーレーと同じリズムを感じる」

せっかくなので、500とミニについても聞いてみた。

「500は2CVより軽い。ワインディングなら小さな500はキビキビしていて一体感がある。2CVもロールを楽しみながらコントロールするおもしろさがあるけどね」

「ミニはクラシックに見えて圧倒的に普段遣いできる。何より安定したクーラーがある」



みんなちがって、みんないい。金子みすゞさんの詩の一節が頭の中でリフレインする。2CVがいいのか、ビートルがいいのか。いや、みんないいのだ!手遅れかもしれないが筆者も今日からそう心得よう。そうすればロン毛を束ねて口髭を生やしたワイルドな連中の影に怯えることもないだろう。

そう心得た筆者はさらに質問を続けた。みんないいのはわかったけど、で、結局どれが一番好きなのさ、と。

「もし一台残すなら2CVかな。車が大好きな自分が、もし車を手放すとしたら経済的な理由だと思うんだよね。そうなると維持するコストはビートルも安いけど2CVが最も安い。500は故障頻度が高い。ミニは故障する箇所が多いし水冷だから工賃がかかる」

見事に質問をはぐらかされたと感じた筆者は、やはり「みんなちがって、みんないい」精神が身についていないのかもしれない。



撮影カットが足りなかったので、最後にもう一回りサイトーさんの運転でビートルを走らせることにした。

「お金があればEV化したいと思っているんだよね。海外ではEV化の実績が4台ともある。将来、電気自動車の時代がきてガソリンスタンドがなくなったとしても乗り続けることができるから。ほら、プジョーにV8のエンジン音をスピーカーから流すモデルがあったでしょ?自分はスピーカーからの音だと気づかなかったんだよね。つまり擬似的な音や振動で満足できるんじゃないかな」

なるほど、そういえば最近乗ったマツダMX-30のEVモデルも加速時にスピーカーから音を出していた。あれは直列6気筒の音に似たいい音だった。

やはり人によって心地よい音はいろいろあって、それで良いのかもしれない。

そんなキレイなまとめ方をビートルの後席で考え始めた筆者だったが、それにしてもビートルはやはりバタバタうるさい。いくらなんでもうるさすぎないか、と思った瞬間、サイトーさんが急にビートルを路肩に止めた。その理由は……、書くことは控えるが写真は載せておくので各自ご判断ください(笑)



文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

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