途方もなくレアなLP400!「鋼のカウンタック」、レストアの記録

Automobili Lamborghini, Yusuke KOBAYASHI


“2つの間違い”が判明


事態が急変したのは我々が帰国し、ポロストリコが車体をバラして塗装を剥がした時だった。

「実はイタリアから連絡があって。塗装を剥がしてみたらなんとボディすべてがスティールでできているって言うんですよ」

カウンタックのボディパネルには、後期モデル群の一部を除き、基本的にアルミニウムが使われている。鋼管スペースフレームにアルミパネルを貼り付けて、あの奇跡のカタチが成り立っているのだ。

「それともうひとつ。ペリスコープもどうやら後から別に作ったものみたいで。素材が違ったらしいんです。だから本当はなかったんじゃないかって。もう何が何やら」

途方に暮れるのも無理はない。よく知られているようにカウンタックの中でもLP400にだけはルーフパネルに台形状の窪みがあってミラー越しに後方目視できる小さな天窓のようなウィンドウが付いている(実際には空しか見えない。後方というより後上方、大きなトレーラーくらいが迫ってこないと見えないと思われる)。ペリスコープとマニアが呼ぶそれはLP400に独特の装備ゆえ、この初代モデルを特に“クンタッチ・ペリスコピオ”と呼ばれることもあるわけだ。

まとめると、けんちゃんのLP400 2号機にはオリジナル重視の目から見ればどうやら“2つの間違い”があった。特徴であるペリスコープが本来はなく、そしてボディパネルはスティール製だったのだ。ただし、その間違いが本社の仕事だというのであれば話は全く別だろう。何せそんな仕様のLP400は他にない。ただでさえレアなLP400の中でも途方もなくレアで歴史的な個体ということになる。

ここからが難しい決断だった。本当に悩んでいた。ポロストリコに出すのだから、オリジナルのコンフィグレーションに戻すことは基本の考えとしてある。その個体、#1120116は工場出荷時にディーノ246に設定されていたブルーに塗られ、インテリアはブラックレザーであることが判明していた。実はこの色、LP400には他にもう一台あるらしい。いずれにしても最初のオーナーがこの色を希望したのだろう。おそらくディーノを所有していたかいるかでその青が気に入っていた。「あのブランドのこの色にしておいて」。以前はよく耳にしたやり方だった。

けんちゃんのもう一台のLP400、日本でレストアを施した個体の方はややオレンジがかった赤。青と赤。ガレージに置いたときの見栄え組み合わせ的にコントラストが効いていて素晴らしい。購入時にはシンプルに赤だった個体を、元色に戻すこと自体は難しい決断ではなかったはずだ。

ちなみに日本にやってきたLP400の多くは赤や黄に塗られていたイメージがある。もちろんオリジナルカラーであった場合も多かった(人気色)が、日本へ輸出される際に人気色へとリペイントされた例も多い。実をいうとLP400のボディカラーは多彩なのだ。ミウラも同様で、初期モデル以外はいろんなカラーを纏っていたものの二次流通時に人気色へと塗り替えられるパターンも多かった。

西川 淳

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