GTーグランドツーリング|ロンドンからブリュセルへランチを食べに気軽に足を伸ばす休日

Photography: Matthew Howell



プリミティブなテイスト
今度はパスカルの410のステアリングを握ることにした。乗り替えてすぐに気付いたのは、よりコンパクトでブルーメルのステアリングは素晴らしいということだ。少し小さい5211ccのV8をかけると、それはマッスルカーのような音を立てた。洗練された411よりちょっとうるさくて、露骨にエネルギッシュだ。動き出すと、100kg軽い410はシャープで機敏であった。

ベルギーに到着すると、快晴の青空は黒く変わり滝のような雨が降ってきた。16インチで185という細いタイヤを履いた410は、15インチに幅205の太さのタイヤを履いた411よりも安定感がない。この2台の製造年はわずか 4年しか違わない。411のボディパネルのすべてが変更を受けているが、両車は根本的には酷似している。ただ、走らせてみると確かに技術の進化を感じる。411は少々原始的な410よりも、よりどっしり感がありコーナリング特性で優れている。だが、私たちはプリミティブな車が好きなのだ。

ブリュッセルの中心に着くと、私たちはグランドパレスに近いサブロンから少し離れた有名な Au VieuxSaintというレストランの表玄関に車を停めた。経営者のアルベルト-ジャン・ニールスと彼の息子フレデリックは、2基のV8サウンドを聞いて、外まで私たちを出迎えに来てくれた。ちなみにこのランドマーク的なレストランは1968年創業で、彼らはそれぞれ三代目と四代目である。アルベルト-ジャンはアストンマーティンDB5を所有していて、私とは古き良き仲間である。

フィリップ・ホワイトが、まだ席に着いていなかったが、私たちは何を食べるか決まっているのでメニューは下げてもらった。ここでお腹を満たすものはひとつだけ。それは看板メニューであるフィレ・アメリシャンだ!

ニールスおじいちゃんは、ロンドンのサボイで修行し、ブリュッセルでラ・ロイヤル・レストランをオープンして、1924年にはカンタベリーでもオープンした。そこで彼はフィレ・アメリシャン、つまりタルタルステーキを生み出したのだ。

レシピはシンプル。丁寧に筋を取り除いた最上級のアイリッシュ・ビーフ、マヨネーズ、刻んだピカリリ、卵黄4つ、塩、こしょう、本物の「Lee & Perrins’」のウスターソース、小さい角切りのタマネギとパセリだ。すべてにベルジャン・チップス、クレソン、タマネギ、甘酸っぱく味付けされたきゅうりを添えて提供される。

私たちが食べ始めようとしたところ、ベルギーの自動車ジャーナリスト仲間のフベルト・ファブリが散歩がてら入ってきて、ランチパーティーに加わって、どのブリストルが好きかと聞いてきた。私の答えは決まっていた。もちろん410だ。初めて生肉を口にするフィリップが、それでもタルタルステーキを完食したのは立派なことである。

最上級のクオリティーとは、繊細、豪華で、心温まる味。美味しくて、そして"生"であること。そう、外にたたずむブリストルたちのように。



目的地であるブリュッセルのレストランに到着。 Au VieuxSaint-Martinでフィレ・アメリシャンを食す。タルタルステーキはこのレストランで生まれたと言っても過言ではない


1966年 ブリストル 410
エンジン形式:5,211cc、V型8気筒、OHV、カーター4バレルキャブレター
最高出力:250 bhp/4,400rpm 最大トルク:340 lb/3,800rpm 変速機:前進3段AT+後退、後輪駆動 
ステアリング:ZF リサーキュレーティングボール型、パワーアシスト付
サスペンション(前):独立不等長ウィッシュボーン、ヘリカルスプリング、テレスコピックダンパー、アンチロールバー 
サスペンション(後):ライブアクスル、トーションバー、ワット・リンク、テレスコピックダンパー 
ブレーキ:ガーリング製ディスク、サーボアシスト付車重:1,600kg 最高速度:130mph、0.60mph 8.0 秒


1967年 ブリストル 411
エンジン形式:6,277cc、V型8気筒、OHV、カーター4バレルキャブレター
最高出力:335 bhp/5,200rpm 最大トルク:425 lb/3,400rpm 変速機:前進3段AT+後退、後輪駆動 
ステアリング:ZF リサーキュレーティングボール型、パワーアシスト付
サスペンション(前):独立不等長ウィッシュボーン、ヘリカルスプリング、テレスコピックダンパー、アンチロールバー 
サスペンション(後):ライブアクスル、トーションバー、ワット・リンク、調整式テレスコピックダンパー
ブレーキ:ディスク、サーボアシスト付車重:1,690kg 最高速度:138mph、0.60mph 7.0 秒


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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation:Shiro HORIE 原文翻訳:野崎 健人 Translation: Kento NOZAKI Words: Robert Coucher

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