ミウラ vs デイトナ|世紀のスーパーカー対決「ランボルギーニ vs フェラーリ」第1ラウンド

ミウラ vs デイトナ



Daytona on the Road
エンツォ・フェラーリがミウラの誕生にどう反応したかの記録は、残っていない。ミウラのデビュー翌年に、フェラーリ365GTB/4デイトナ(以下、デイトナ)がフロントエンジンで投入されたことをみると、さほど気に留めていなかったのかもしれない。ミドシップカーでのレース経験はあっても、それをロードカーに応用するには時間が足りなかったという解釈もできなくないが。

デイトナはミウラに比べると控えめに仕上がっていたが、正統派としての風格すら感じさせるものだった。ミウラは白紙状態からセンセーショナリズムを追い求め、デイトナは250GTLや275GTBシリーズなどから脈々と続くV12フェラーリの血筋があった。デザインはピニンファリーナに在籍していたレオナルド・フィオラヴァンティが手掛けたもので、構想からたった1週間で仕上げたといわれている。

デイトナは275GTBから引き継いだV12エンジンを4390ccまで排気量アップし、最高出力は352psを誇った。数値上はミウラに劣るデイトナだが、加速性能はほぼ互角で最高速度は280km/hと発表されていた。しかもミウラと違って、フロントリフトに悩まされることはなかった。

デイトナは間違いなく、ミウラよりもユーザーフレンドリーであった。ドライビングポジションはミウラよりも違和感がないし、ドライバーズシートからちゃんと周囲が見渡せる。インテリアにはカラーコーディネートされた本革があしらわれていたり、ダッシュボードには必要なものが美しく機能的に配置されていたり、スポーティさのなかにも富裕層ユーザーを納得させるだけの高級感が漂っている。そういう意味ではまさにサラブレッドだ。

エンジンの始動はミウラ同様、喉の奥に何かが詰まったように不機嫌そうに火が入る。スロットルペダルをそっと煽ってやるとアイドリングは安定する。いずれの車も独特なV12サウンドを奏でるので、ついついブリッピングしたくなる。V12エンジンのスロットルレスポンスに限っては、デイトナのほうがやや鈍いかもしれない。ミウラのエンジンが生気漲る雰囲気なのに対して、デイトナは余裕と懐の深さを感じさせる。

デイトナの欠点はステアリングの重さと、径が大きなステアリングホイールだろう。操舵力を軽減するために径を大きくしたのだろうが、それにもかかわらず重く、とにかく大きい。デイトナを運転していると間違いなく腕力がつく。速度が高まると操舵力は軽くなるが、今度は路面状況によっては激しいステアリング・キックバックに驚かされる。

V12エンジンを収めた長いフロントノーズをもつデイトナは一見、ワインディングには不釣り合いのように思える。だが、デイトナを知れば知るほどドライバーは魅了されていく。ワインディングを攻める術をいったん習得すると、デイトナのバランスの取れた走りは大人の身のこなしであることを感じさせてくれる。


デイトナは275GTBから引き継いだV12エンジンを4390ccまでボアアップし、最高出力は352p sを誇った。数値上はミウラに劣るデイトナだが、加速性能はほぼ互角で最高速度は280km/hと発表されていた

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編集翻訳:古賀 貴司 Transcreation:Takashi KOGA Words:Keith Adams Photography:Matthew Howell

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