ここは博物館?と思いきや、なんと駐車場! おしゃれすぎるドイツの新感覚・車両保管施設

見せるカーストレージ(Photography:Martyn Goddard)



しかし、リマイズの本当の魅力は駐車事業そのものにある。ドイツ人はガラスのボックスに車を入れておくのが好きなようで、フォルクスワーゲンがウォルフスブルクのアウトシュタットにシースルーの車両格納庫を用意しているのを見ればよくわかる。デュッセルドルフのリマイズもガラスで仕切られた車両保管スペースを75台分用意。収納力を高めるため2階建にして、肉焼き機のようにグルグルと回転させて車の出し入れをする。使い勝手はどうだろうか。利用したいときは専用チップの入ったカードをスロットに入れるだけで、自動的にあなたの車は目の前に出てくるという仕組み。だから常駐スタッフはひとりもいない。契約者は1枚のカードで、いつ、いかなる時間でも車を出し入れすることができる。もちろんそれぞれの車には完全なセキュリティがかかっているので安心だ。だから希望者も多く、ボックスにはウェイティングリストができているだけでなく、床置きのエリアもすでに満杯である。どんな車が占めているかといえば、古いところでボルグヴァルトや戦前のアルファ、新しいものでもヴェイロンやガルウィングといったところだから見ごたえも充分である。

愛好家はもちろんすべての人が楽しめる場所
新旧の車が同居しているからといって、「古い車はいいねえ、いや車は新しいものに限るよ」、といった討論をしかけるような人はここにはいない。リマイズの客はクールに車を愛し、機械的に美しいものやその周辺文化を静かに楽しむのである。支配人ミカ・ハーンはここを「車愛好家が集う場所」と位置付けている。お客さんはいつの間にか自然に深く結びついているのだそうだ。

ルディガー・ランゲCEOは、モール中の店を見て回るだけの客とはまったく異なる客層をターゲットにしていると言う。ここの客はビジネステナントから発信される共同体意識にも似たものを求めてくるのだそうだ。彼らは市場原理とはまったく異なるところで動いている。発信されるものがたとえ車に関係ないものでも車好きの人たちの心をとらえれば彼らは関心を向ける。たとえば、高級腕時計の展示会であったり、アンティークな玩具であったり、世界のウィスキー祭りだったり。ドライビングに関するイベントならなおいい。公共の駐車場では頻繁に大規模な二輪、四輪のクラブミーティングが開かれており、さまざまなツーリングも企画されている。

ところでリマイズ・デュッセルドルフは遠い昔に成功を収めたバンヴィル・ガレージに内容面で追いついたかというとそうはいえない。バンヴィルでは上の階までぐるぐると駆け上がるヒルクライム場まであったのだ。今日ではなかなか同じことはできそうにないが、高層の機関庫を今日のビジネスに活かしたという点では賞賛されてしかるべきだろう。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Dale Drinnon Photography:Martyn Goddard 取材協力=クラシック・リマイズ・デュッセルドルフ(www.remise.de)、 マーティン・スミス、フォード・ダゲナム・ヘリティッジ・コレクション

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