ここは博物館?と思いきや、なんと駐車場! おしゃれすぎるドイツの新感覚・車両保管施設

見せるカーストレージ(Photography:Martyn Goddard)



カーデザイナーも愛用者
次はマーティン・スミスにご登場願おう。彼はリマイズ・デュッセルドルフをより深い部分まで知り尽くしている人物だ。ポルシェ、アウディ、最後はフォード・ヨーロッパでデザイン部門の長を務め上げ、2014年末で一線から退いたものの、今でもドイツの自動車事情に詳しい英国人である。現代のクラシックとして高い評価を得ているアウディ・クワトロと、2009年のフォード・フォーカスRSMk.2の開発責任者して名高い。私はカメラマンとこのフォーカスに乗ってダゲナムにあるフォード社を発った。マーティンがデザインした動的なフォルムは、フォードのグローバルデザイン戦略を最も的確に具現化したものといえるだろう。大きな声では言えないが、300bhpのパワー、160mhp(約258km/h)の最高速は期待を裏切るほど扱いやすく、車も私も安心した走りを楽しめた。

自然と行ってみたくなるところ
マーティンもリマイズがオープンした2006年からの利用者のひとりである。「グランドオープンのときにイベントセンターで開かれたガラディナーに招かれてね」ビストロでコーヒーをすすりながら彼は話し始めた。「これは成功するとピンときたよ。その晩さっそく問い合わせをして持っていた車を預けることにした」

現在マーティンが個人的に契約しているガラスボックスには、彼がよくラリーに出場するオースティン・ヒーレー3000が入っている。ノーザン・ヒーレー・センターで組み上げられた車で、合法的なチューニングが施されている。デニス・ウェルチのエンジン、ウェバー・キャブレター、MSDのイグニッション、クァイフェの変速機、アルミ製のボディと錚々たる内容で、出力は212bhp。

「ラリーを終えて帰ってくると深夜になることがある。そんなときでもここはカード1枚で24時間出し入れできるから安心なんだ」

"車愛好家が集う場所"について意見を聞くと、全面的に賛同できると答えてくれた。彼自身、目的なしにふらっとやってくることがあるという。「週末に来てみるとよくわかるよ。子供連れの家族がリラックスして楽しんでいるのはいいものだね。国を超えていろんな人が来ているよ。ここは入場無料の博物館だからね。興味深い車がたくさんあるし、雰囲気もかしこまったところがない。ディーラーもガラスボックスも店舗もすべてが頻繁に展示を変えるから、来れば必ず新しいものに出会えるんだ」

「友人がここに来たら案内したいところがあるよ。私はよく国際デザイン会議をここのイベントセンターで開くんだが、そこを見たら誰もが驚くだろうね。この建物はシンプルだけどゴージャスで、屋根なんかはバイエルン・ミュンヘンのサッカースタジアムと同じなんだ。つまり布地をピンと張った屋根でね、夜になるといろんな色でイルミネーションされるんだよ。それを見ていると、昔のように蒸気機関車がターンテーブルに乗って回っている姿が思い浮かぶよ」

訪問してからしばらくたったある日、モヴェンディのところにあった元ポルターゴのOSCAや、リマイズのアーティストが描いたディーノ246が頭から離れなくなっている自分に気がついた。もしかしたら私自身の中にも、モールに行かないと落ち着かないライフスタイルが出来上がってしまったのかもしれない。

"ミスター・アウディ・クワトロ"と呼ばれる元デザイナー、マーティン・スミスが利用者の立場からリマイズを語ってくれた。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Dale Drinnon Photography:Martyn Goddard 取材協力=クラシック・リマイズ・デュッセルドルフ(www.remise.de)、 マーティン・スミス、フォード・ダゲナム・ヘリティッジ・コレクション

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