世界中から集まった70台のフェラーリでトスカーナ地方を3日かけて巡る

Photography:Ferrari


 
2日目は、フォルテ・デイ・マルミから海岸沿いの美しい道を北上して漁村のレーリチへ。そこから再び南へ戻り、ピサで昼食をとる。フェラーリがピサの斜塔を囲むようにずらりと並んだ光景は、実に壮観だった。そして迎えた最終日。伝説的なアベトーネ通りをモデナまで走り、エンツォ・フェラーリ・ミュージアムでランチを楽しんだあと、フィオラノ・サーキットを走る。フィニッシュ地点は、マラネロのフェラーリファクトリーだ。
 
ようやく太陽が顔を出し、先導するライダーの膝まで覆うブーツが日差しで輝く。このイベント最大の山場で、ビッグ・モンツァが実力を発揮した。直線の続くアベトーネ通りは、フィオラノができるまでフェラーリのテストで使われた道だ。860をフル回転させるチャンスである。仕事熱心なパトカーがサイレンを鳴らして市民をブロックする中、860 が歌い始めた。4000rpmを超えると、"硬かった"エグゾーストノートが明らかに滑らかになり、そこからすべてがはまり出したのだ。
 
レッドラインの6500rpmまで情熱的に駆け上がりながら、860は私たちが待ち望んでいたレースウィナーのサラブレッドへと姿を変えた。全身に力をみなぎらせ、300bhpのパワーをすべて解き放つ。レスポンスがスリリングなまでに鋭くなった。ギアボックスもスムーズに動き、きれいにトップギアに入る。その間も加速は容赦のない勢いで続く。ブラビッシモ! これこそが偉大なるレーシングカーの真の姿なのだ。ファンジオが愛したのも無理はない。
 
ダミアンも同じ気持ちだった。車に鞭打ってアベトーネ通りを駆け抜け、フィオラノを走り、ついにファクトリーのあの有名な赤煉瓦のゲートをくぐる。そのとき、ダミアンは声を震わせてこう言った。「胸がいっぱいだよ。自分の運転でファンジオのワークス・モンツァを里帰りさせられるなんて⋯」


 
カヴァルケード・クラシケを表現するのに、ユニークな記念行事というだけでは足りない。イタリア有数の絶景が続くルートや、全行程での五つ星のサービスも、もちろん素晴らしかった。参加費も当然ながら高額なのだが、どんなに裕福なフェラーリ・エンスージアストでも金では買うことのできない"特別"な経験が用意されていた。フォルテ・デイ・マルミやルッカ、レーリチ、ピサの市街地を通行止めにし、エンツォ・フェラーリ・ミュージアムやフィオラノを貸し切り、エンツォの息子、ピエロも途中から一行に加わってくれたのである。
 
さらなるハイライトが最後に待っていた。ブラックタイのガラディナーが行われた場所は、普段は立ち入ることのできない神聖なるファクトリーのど真ん中だったのだ。参加者は、光輝く生産ラインで組み立て途中のフェラーリに囲まれながら、フェラーリスタイルのパーティーを心ゆくまで楽しんだ。これぞまさに"プライスレス"だ。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Robert Coucher

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