ベントレー コンチネンタルSCの知られざる魅力を堪能するヨーロッパ横断

Photography: Martyn Goddard


 
シャンブリに宿泊した後、モン・スニがあるアルプ地方を抜け一路イタリアを目指す。道幅こそさほど狭くはないが、峠道はなかなかチャレンジングだ。しかし、ようやく天候に恵まれ、最高のドライブ日和となった。山を越えピエモンテ州に入り、A32アウトストラーダでトリノを目指した。
 
トリノでの夜は、友人たちとオステリア・ラ・コスタンツァにて伝統的なトリノ料理に舌鼓を打った。食後は街中を少しドライブし、高級ブランドが並ぶエリアでコンチネンタルSCを撮影してみた。実にセクシーに撮れたと思う。大きなタイヤがブリスターフェンダーに収まり、さりげないエアロパーツがコンチネンタルRとは一線を画す。通りがかるイタリア人は笑顔で車を誉めてくれる。イギリス人であることを誇りに思う瞬間だ。本当のことをいえば、米国人である私がイギリス人と結婚しただけなのだが。
 
木曜日はトリノにある自動車博物館で一日を費やした。ここは半日では済まないほど見応えがあるので要注意だ。1854年、ヴィルジーニョ・ボルディーノが手掛けた蒸気エンジン車、1893年のベンツ、イタリアに初めて輸入されたプジョー、イタリアで初めて生産された三輪自動車「ペコリ」など自動車史における歴史的価値の高いものがズラリと収められている。その多くは、フィアット創業メンバーの一人、ロベルト・ビスカレッティ・ディ・ルッフィアの息子、カルロが寄贈したもの。1932年に建てられた博物館だが、2011年にリニューアルされた。


 
金曜日にはA4アウトストラダーレに乗り、ミラノを抜け最終目的地であるコモ湖を目指す。コンチネンタルSCは洗車も済ませ、ようやくトップを外しての走行を試してみることにした。暖かい地中海の風がコックピットに入り込む。クローズド時の静粛性とはうってかわって時折、やんちゃなV8エンジンのエグゾーストノートが耳に入ってくる。
 
A4アウトストラダーレでは、最近のアウディがコンチネンタルSCのリアにピッタリと張り付いてきた。高速道路における"獲物"に見立てられてしまったのだろう。そこで私は徐々にスピードを上げ、最終的にはフルスロットルを食らわしてみた。すると、狙った獲物が間違いだったことに気づいたのか、アウディはスピードを落としコンチネンタルSCから離れていった。巨漢で老体だからといって、甘く見られては困る。同時に、コンチネンタルSCの迫力を周囲に知らしめてくれることを切に願うばかりだ。
 
宿泊はホテル・トレ・レ。城壁の内側に位置し、かつて修道院だった16世紀の建物を利用している。約100年に渡ってコルベッラ一族が所有・経営している。最近はこの手の家族経営ホテルがヨーロッパでも減りつつあるのは、悲しい現実と言えよう。なんといっても、併設されているレストランが美味だ。また、ホテルからちょっと歩くと、リストランテ・リノも必ず訪れる場所と決めている。なんなら、コモ滞在中はずっと2軒のレストランを行き来したいくらいだ。
 
コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステが開催されているグランド・ホテル・ヴィラ・デステまでは、およそ1時間ほどだ。正面玄関に到着すると、係員が笑顔で出迎えてくれ、大きな手ぶりで我々を誘導してくれた。セレブリティ・ゲストと思われたなら光栄だし、コンコルソ・デレガンツァ出展車両だと思われても不思議ではない。いずれ、コンチネンタルSCが審査対象として並ぶ日がやってくるだろう。そんな車なのである。
 
さほど興味がなかったはずの90年代ロールス・ロイス/ベントレー。今回の長距離ドライブを通して、今なお"あの頃"のベントレーを愛する人が多くいる理由が垣間見られたように思う。コレクターの友人に感謝を込めて⋯。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国)  Transcreation: Takashi KOGA (carkingdom) Words: Dale Drinnon 

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