デ・トマソ最後のスポーツカー「グアラ」、実はお手頃なネオクラシックカーかも!?

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デ・トマソ・グアラは、創業者兼オーナーのアレハンドロ・デ・トマソが世に送り出した最後のスポーツカーである。1993年のジュネーブモーターショーで発表されたグアラは、当初はクーペボディのみだった。その後、ロードスターとオープントップのバルケッタのボディスタイルが用意された。バルケッタにはルーフとフロントウィンドウがなく、ヘルメットを着用して運転しなければならなかった。



グアラは、1991年に発表されたマセラティ・バルケッタ・ストラダーレ(サーキット専用マシンの公道仕様)のプロトタイプをベースにしている。当時、マセラティはデ・トマソマ傘下に収まっていたから、このようなことが可能だった。ただ、マセラティがフィアットに買収されたため、アレハンドロ・デ・トマソによるマセラティ製バルケッタの計画は白紙に。そこでデ・トマソは“改良版”(V8エンジン搭載のために全長が延長された)としてグアラを誕生させ、設計はマセラティ・バルケッタと同じくカルロ・ガイノが手掛けていた。



サスペンションはF1やインディカーの技術を彷彿とさせるもので、F1エンジニアとして有名なエンリケ・スカラブローニが設計したローズジョイントを持つプッシュロッド式フロント&リアエンドサスペンションに独立懸架式ダブルウィッシュボーンを備えている。フロントフード下はレーシングスタイルのサスペンションで占められおり、グアラにラゲッジスペースはない。ホイールはカンパニョーロ製だ。





初期のグアラには、BMW 840Ciと共通の4.0lV8エンジン(M60)が搭載されていた。トランスミッションにはゲトラグ製の6速MTが採用され、スポーツ走行のためにゲート式シフターが装備された。後にBMWがM60エンジンを廃止してからは、最高出力320psのフォード製4.6リッター・スーパーチャージャー付きV8エンジンに変更された。ブレーキはブレンボ製の非サーボアシストでフェラーリF40に採用されたものと類似していた。また、重量増加を嫌い、パワーステアリングは採用されていない。





ポップアップ式ヘッドライト、モモ製ステアリングホイール、アルミ製ギアノブ、パワーウィンドウ、熱線入りリアスクリーン、アナログ時計、ダッシュボード・キルスイッチ、サベルト・ハーネス、ヒーター&ベンチレーションなどが純正仕様となっている。グアラはアルミ製のバックボーンシャシーを持ち、ファイバーグラスやケブラーを用いたボディシェルで覆われていた。インテリアにはBMWの部品が多用され、メーターパネル、ヒーターのスイッチ類、パワーウィンドウのスイッチなどBMWファンには“懐かしさ”を呼び起こす。







一般的にグアラはBMW製エンジン搭載車を前期型と呼び、フォード製エンジン搭載車を後期型と区分けしている。現在、「COLLECTING CARS」というオンライン・オークションサイトに出品されているのは、後期型の2001年式のもの。走行距離はわずか5697㎞で、6月にオランダにて7万6,001ユーロ(手数料込9万441.19ユーロ)で落札された履歴がある車両だ。6月に落札されたばかりのものが既に転売されているのか、前回のオークションで落札されたものの取引が成立しなかったのか、定かではない。ちなみに出品地もオランダである。



COLLCTING CARSによるとグアラは合計52台が生産され、クーペは38台生産されたのだという。原稿執筆時点(9月8日)では9件の入札があり、2万2,250ユーロである。どこまで入札されるのか見ものだが前回の落札価格程度だとするならばグアラ、実はお手頃なネオクラシックカーなのではないか、と感じられてならない。

デ・トマソというブランド、生産台数の少なさ、マセラティとのつながり、ネオクラシックカーとしての条件が揃っている。参考までにアメリカではグアラ・バルケッタ(生産台数は10台?)がとある中古車販売店で販売されているが、35万5,500ドル(!)というプライスが掲げられている。“売れたらラッキー”という強気の価格表記だとは思うが…、当該グアラ・クーペが破格に思えてくる。




文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司

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