カウンタック、ジャルパetc. クラシック・ランボルギーニに「正しく乗る」|ランボルギーニ・ポロストリコ

Lamborghini


ランボルギーニの2作目、400GT 2+2


ここで大きく時を遡り、ランボルギーニでは第2作目となる400GT2+2のステアリングが私に委ねられることとなった。

今回、われわれに用意されたクラシック・ランボルギーニはどれも貴重なモデルばかりだが、そのなかでも、この400GTはとりわけ貴重で、60年を超すランボルギーニの歴史のなかでも重要なモデルといえる。



1964年、ランボルギーニは初の量産車“350GT”を世に送り出す。これはカロッツェリア・トゥリングが手がけた2ドア・クーペ・ボディのフロントに、ランボルギーニ自身が開発した3.5リッターV12エンジンを搭載。6500rpmで280psに達するパワーはZF製5段ギアボックスを介して後輪に伝えられるという、超高性能なグランドトゥーリズモだった。

350GTはそのバリエーションも含めると2年間で140台近くが生産される“スマッシュヒット”となったが、その成功をより確実なものとしたのが、1966年にデビューした 400GT 2+2だった。その名のとおり、エンジンはボアを拡大することで4.0リッターの排気量を獲得。最高出力は320psへと強化された。また、評判が悪かったギアボックスをZF製から自社製に切り替えるとともに、ルーフラインに手を加えて350GTの2シーターから2+2にモディファイ。これらの改良によりグランドツーリズモとしての資質をさらに高めた400GT2+2は合計250台が生産され、そのうちの1台は日本に輸出された初めてのランボルギーニとなったほか、ビートルズのポール・マッカートニーも購入。彼はその後、10年以上にわたって 400GT 2+2を手元に残しておいただけでなく、ロンドンのサビル・ロウで行われたルーフトップ・コンサートの映像にも、その赤いボディが収められているという。

ダッシュボード上のイグニッションキーをひねると、3~4秒ほどのクランキングのあとでV12エンジンは目覚めた。燃料供給は6基のウェバー40DCOEに依るが、そのレスポンスは前述したムルシエラゴ並みに軽々としてシャープ。しかも回転の上昇が速いだけでなく、スロットルペダルから右足を離せばタコメーターの針はアイドリングの1500rpm付近までストンと下がる「素早い回転の落ち」も実現していた。しかも回転フィールはいたって滑らかで、50年以上も前に誕生したことがとても信じられないほどだった。



フロント・エンジン・レイアウトゆえにキャビンは足下を含めて広々としているうえ、視界も良好。ドライビングポジションにも無理はない。初のランボルギーニ製マニュアルトランスミッションは、シフトストロークがやや長めなことを除けばゲートがしっかりとしているうえにシフトレバーの動きも滑らかで、思わず笑みがこぼれてしまう。ノンアシストのステアリングはリムが大径なうえに細くていかにもクラシックだが、動き出してしまえばさほど重くは感じられない。「これはドライビングが楽しめそうだ」そんな期待に胸を高鳴らせながら、近くのワインディングロードを目指した。



グランドツーリズモらしく乗り心地は優しく快適。おかげでコーナリングではピッチもロールもそれなりに起きるが、だからといってハンドリングが鈍くもなければ、不安になるほど姿勢が崩れることもない。あくまでも常識的で節度あるサスペンションの動き方といっていいだろう。



ただし、ステアリングは恐ろしく正確なうえに、レスポンスも良好。もっとも、荷重移動の影響ははっきりと受けるので、コーナーに進入する前にしっかりとフロント荷重にする必要はあるが、この原則さえ守っていれば、 400GT2+2は意のままに操れるし、半世紀以上も前に作られたグランドツーリズモとは思えないほど速いペースを維持したままワインディングロードを駆け抜けていける。2作目にしてこれほど完成度の高いハイパフォーマンスカーを作り上げたランボルギーニという自動車メーカーに、私は改めて畏敬の念を抱いた。


大谷達也

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