BRM V16エンジン|モーターレーシングの愛されるべき厄介者が甦った

Photography: Paul Harmer



完成

ダグ・ヒルは、すべての資金が確保される前であっても、エンジンの完成を約束したホール&ホール社の姿勢に感激した。P15は2018年4月にビューリーに戻り、5月に開催された春のオートジャンブルでヒルの運転で4年ぶりに走りを披露した。サウンドは素晴らしかったが、ドライバーの正面のボビン式レブカウンターが示していたのは、3000rpmからにしかすぎなかった。つまりはまだやらなければならないことがあるわけだ。

「クラッチを焼きたくはないが、パワーがなければ止まってしまう。発進または変速するためには、7500rpmあたりで回転を維持しなければならないが、それは簡単ではない。燃料が冷えている時の始動は簡単だが、グッドウッドは暑く実に困難になった。さらに、エンジンルームの下に溜まったメタノールは、(路面を汚さないから)問題ないのだとコースマーシャルを説得しなければならなかった」とはヒルの弁だ。

これを受けてリック・ホールは、「楽しみながらパーフェクトに走ることもできるだろうが油断は禁物だ。次はマグネトーが逝く。シリンダーのいくつかが休んでしまったら、原因はほとんど確実にマグネトーだ。さっさと車を積み込んで帰ろう」と続けた。ビューリーとホール&ホールが製作したマグネトーはトラクターユニットからモディファイしたルーカス製よりはるかに信頼できる。

これから

BRM V16を動かすことは大仕事だ。一緒に暮らすことも簡単なことではない。P15は長い間ビューリーで眠っていたのだから、単にエンジンを止めて仕舞い込むことはできない。ヒルはこう語っている。

「ミュージアムピースの車を持つことは極めて面倒だ。まずメタノールを洗い流さなければならない。そして次回、確実に動くようにフューエルシステムに注油しておく。単にメタノールを抜いただけで放置するのではだめだ。なぜなら燃料系統を乾燥させ、接合部を壊すからだ。やり方は、通常の燃料を濃い混合にしてミスファイアさせる。それですべてのメタノールは除去できたということだ。そして止め、注油する。リ・デックスが何よりよい。

残念だが、2018年にP15の走りを公開する予定はない。そしてこの素晴らしい車はこれを正しく扱うことができる経験あるドライバーとともにあるべきだとヒルは決心した。「私は2 度と運転するとは思わないが、これを成し遂げたことをたいへん誇りに感じる。P15にはこれを真に扱える誰かが必要だ」

BRM V16
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1950年 BRM Type15 Mk.1
エンジン形式:1488cc(49.53×48.26mm)、鋳鉄製ウェット・シリンダーライナー、
総軽合金製、135゜V型16気筒、ギア駆動式DOHC、32バルブ
圧縮比:6.0:1
燃料装置:3in.SUキャブレター×2基+ロールス・ロイス製2ステージ遠心式スーパーチャージャー
最高出力(予測値):585bhp/12000rpm
変速機:前進5段MT、後輪駆動 ステアリング:ウォーム&ナット
シャシー/ボディ:鋼管スペースフレーム/アルミニウム製シングルシーター
サスペンション(前):独立式、ツイン・トレーリングアーム
サスペンション(後):ド・ディオン式 ブレーキ:4輪ディスク 車重:737kg
寸法(全長×全幅×全高/WB mm):4013×1422×889/2489


編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers) Transcreation: Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers)
Words: Paul Hardiman Photography: Paul Harmer

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers) Transcreation: Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers) Words: Paul Hardiman 

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