美しく蘇ったフェラーリ 375 PLUSの栄光と没落の歴史

フェラーリ375PLUS



1954年2月28日、モロッコのアガディールでニノ・ファリーナが375プラスを駆り、早速優勝を勝ち取る。このときピエロ・スコッティがハンドルを握った375MMは3位でフィニッシュした。この2台は翌週のダカールGPにも参戦し、スコッティが優勝。ファリーナのプラスは惜しくもリタイアとなったものの、最速ラップレコードを叩き出した。

次に375プラスが登場したのは4月4日だった。ウンベルト・マリオーリ/ニーノ・カッサーニがジロ・ディ・シチリアのロードレースに参戦。6,800回転で347bhpを記録したと発表された。

675マイルの最初のポイント、トラパニに到達した時点で、マリオーニはピエロ・タルッフィのランチアD24 V6を67秒上回っていた。その2時間後、アグリジェントではタルッフィがマリオーリを1分58秒上回るが、そのまた4時間後のエンナでは、マリオーリが3分30秒近く全ランチアチームを引き離した。

このエンナ地点後、惜しくもマリオーリの運は尽き、結局タルッフィがこのレースを制することになるものの、エンツォ・フェラーリはマリオーリを「とてつもなく速い長距離レーサー。どんなコース、距離であろうが、困難に立ち向かう彼は、チームの財産である。」と非常に高く評価した。

この後、5月1日にはイタリアで最も重要なレース、ミッレ・ミリアが開催された。375プラスのエンジンに改良が施され、最大トルクは43.55kg/mから48.11kg/mへと約10%アップ、ミッドレンジの出力がさらに25bhpアップした。

しかし、暗く、雨が降る中、ペスキエーラをスタートしてから間もなく、ファリーナの375プラスは木にクラッシュ。ファリーナは腕と鼻を、同乗していたルイジ・パレンティは足と骨盤を折った。車の損傷は激しく、廃車となった。一方マリオーリの375プラス(0384 AM)とそのチームメイト、パオロ・マルゾットの375MMは3台のランチアが雨の中走り抜けていく後を追い、4位と5位につけていた。カステロッティとタルッフィのランチアが脱落し、マリオーリは3位へと浮上。フィレンツェを前に、パオロ・マルゾットの375MMがギアボックスのトラブルでリタイアしたが、マリオーリの前にはアスカリのランチア1台となっていた。フィレンツェでのアスカリのタイムは 8時間 22分18秒であったのに対し、マリオーリのタイムは8時間27分25秒だった。

調子は上々だった。マリオーリは、ゴール前のボローニャからブレシアへのストレートで勝負をかけ、小さなランチアを捉え、制するつもりだった。「問題はこの車が常に“走りたがり”、リラックスできる場面が全くないことだ。タイヤがパンクする危険といつも隣り合わせなのさ。4.5リッターF1仕様のリアマウントギアボックスには、4.9リッターエンジンでの大きなトルクは負荷がかかる。ギアボックスにもタイヤにも負荷がかかりすぎないよう、加速は常に慎重にしないといけない。」ラティコーサ峠を抜けるとき、勝負をかけマリオーリがアクセルを踏み込んだ。しかし次の瞬間、エンジンが唸りを上げ、もはや加速することはならなかった。車はゆっくりと減速し、後輪は利かなくなっていた。

仕方なくマリオーリは車を人里離れたその場所に車を置き去りにし、ボローニャへと自分の車で帰った。結局そのままアルベルト・アスカリがこのレースをなんなく制し、ランチアに勝利をもたらすこととなり、フェラーリのミッレ・ミリアでの6連勝はここでストップした。

回収された「0384AM」はマラネロで修理が為され、2週間後には英国のシルバーストーンへ送られた。そしてアルゼンチンの著名なドライバー、ホセ・フロイラン・ゴンザレスがハンドルを握り、F1デイリーエクスプレスBRDCインターナショナルトロフィーの前座レースである17周(50マイル)スポーツカーレースに参戦した。濡れて不安定な路面状況でありながら、ゴンザレスが375プラスで記録した平均速度は83mph。最速ラップは時速85.68mphだった。ジョージ・アベカシスのHWMジャガーを破り独走でゴールを決めると、たっぷり15秒は奇妙な沈黙が流れた。「脅威のフォーナイン(4.9)」がレースを始めから終わりまで支配し、全てのライバルを食ったのだ。ゴンザレスはこの日、続いて「スクアロ(フェラーリ 553)」でF1ヒートレースを、そしてフェラーリ625で35周のファイナルレースを勝ち取り、ハットトリックを達成した。イギリスのメディアは、ずんぐりしたアルゼンチン人がシルバーストーンで見せた、見事なドライビングと力強い走りに驚き、彼に「パンパスブル(大草原の猛牛)」というニックネームをつけた。



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