フェラーリ、カウンタック、アストンマーチン、コルベット…スーパーカーNo.1に選ばれた車種とは?

スーパーカーNo.1は果たして



フェラーリF40
あなたの感性に少なからず影響を与えるかもしれないほど偉大なクルマである。フェラーリF40に初めて乗ると、少し頭がクラクラするかもしれない。エンジンの最高出力は476bhpで、初めて200mph(約320km/h)を超えた本物の量産車として歴史に名を留めている(正確には201mph)。


もしもF40を初めて走らせる場所がサーキットだったら、この騒々しいクルマのコーナリング性能に圧倒され、溢れるような感動を味わうことになるだろう。けれども、そうした感情は一時的なものに過ぎない。あなたがどうしようもなく鈍感でない限り、どんなに速く走らせても、F40が恐ろしく御しやすいクルマであることにいつか気づくことだろう。そうやって馴染んでいくうち、挙動の変化が予測しやすいことに気づき、さらにF40に親しみを覚えるはずだが、それでも、このクルマのステアリングを握るたびに、あなたは頬を綻ばせないわけにはいかないはずだ。

もともとハイテク満載のポルシェ959に対抗するために市場に投入されたF40は、フェラーリが創業40周年を迎える1987年に間に合うよう、グループBの288GTOをベースに開発された。そのコンセプトは、公道も走れるレーシングカーというもの。当初、生産台数は400台で、ボディカラーはすべてレッドと発表された。エンジンは排気量2936ccのV8ツインターボがGTOから移植され、デザインはデイトナ、365BB、308GTBなどを手がけたピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティが担当した。ただし、既存のフェラーリとは大きく異なっている点もあった。そのスタイリングこそ、官能的な曲線で覆われていていかにもフェラーリ的だが、ボディパネルの多くはカーボンファイバー、ケブラー、アルミニウムなどから作られた。エアロダイナミクスにも注意が払われ、空気抵抗係数を示すCD値は0.34。しかも前面投影面積が小さいことから、ドラッグは極めて小さかった。

コンペティションカーとして誕生した288GTOとは異なり、F40はそもそもロードカーとなることを前提にして開発された。GTレースの人気が世界的な高まりを見せるのは、この数年後のこと。ところが、1992年に生産が終了(最終的に1315台がラインオフし、なかには当初の発表と違って赤以外のボディカラーもあった)すると、F40は次第にサーキットに姿を見せるようになる。ただし、この頃GTレースで連戦連勝を飾っていたのは、F40よりも後にデビューしたマクラーレンF1だった。なにもスピードで負けていたわけではない。F40は信頼性が不足していたのだ。

いくつものNACAダクトが取り付けられて物々しい雰囲気を漂わせているF40だが、サーキットでのF40は意外なほど従順である。ただキーをひねって走り出せば、ドライバー・エイドなどなにひとつないにもかかわらず、思うがままに操ることができる。とりわけ、ブーストがほとんど効いていない領域でのドライビングは、クラッチが重いのを除けば実に容易。ただし、4000rpmで発生する425lb-ft(58.8mkg)のトルクは、とりわけウェット・コンディションで手こずることになるだろう。なにしろ、5速でさえリアタイヤのグリップを失わせることができるのだ。

いっぽう、パワーアシストを持たないステアリングはやや重めの操舵力が絶妙で、掛け値なしに世界一と評価できる。そしてベンチレーテッドディスクが与えられたブレーキは食いつきが良好で、どんなときでもフェードする気配さえ見せない。しかも、とんでもない間違いを犯さない限りスピンすることはなく、正確でレスポンスのいいハンドリングを堪能できる。それはまさしく夢のような体験といえる。

F40は見栄を張るためのクルマではない。もちろん、F40でロンドンのキングス・ロードを走っても構わないが、それがこのクルマに与えられたそもそもの使命ではない。それに、スーパーモデルのような女性を引き寄せるというよりは、街で見かけるとすぐに携帯電話で写真を撮りたがり、そのスペックをスラスラと語るような男性の心を捉えて放さないクルマなのだ。しかも、乗る者の心をこれほど浮き立たせてくれるスポーツカーも他にない。もうひとつ、歴史的に見ると、エンツォ・フェラーリ自身が最後に承認したロードカーが、このF40だったのである。

F40には欠点もある。けれども、このクルマを乗りこなそうと思った者は、フェラーリが生み出した"美しき野獣"を飼い慣らすことが思いのほか簡単であることに気づき、誰もが驚くことだろう。


V8ツインターボ・エンジンのパワーで量産車として初めて200mph(約320km/h)の壁を破った。そしてエンツォが見届けた最後のフェラーリでもある

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