ローリングストーンズのビルが宇宙船のような愛車で過ごした日々の思い出を語る│あの著名人にも会いに

イギリスの伝説的ロックバンドであるローリングストーンズは1971年、フランスに滞在していた。そしてその時、ベーシストのビル・ワイマンは新品のシトロエン SMを思い切って購入し、それ以来共に生きてきている。これは、シルバーに輝くシトロエンSMに惚れ込んだ1人のアーティストの物語である。

私たちはビルが暮らす15世紀に建てられた邸宅を出て、ガレージへと足を進めた。歩いていると、彼はどこか不快そうな様子を見せる。身を切るように冷える日だったのだ。震えながらシルバーのシトロエンSMの周りを歩く彼に、最後にこの車に乗ったのはいつかと尋ねた。そして分かったことは、今日まで35年もの間、このシトロエンSMは動いていなかったということだ。他にもいくつかあるメルセデスと共に売却したほうが良いと今では思っているそうだが。

ビルは82歳だが、ずっと若く見える。ローリングストーンズ絶世期の時代でもドラッグを拒絶してきたことも彼の若さの秘密だろう。1971年にローリングストーンズは南フランスで過ごしていた。イギリスの莫大な税金対策のために逃れなければならなかったのだ。キース・リチャーズは限界まで野性的な暮らしをしていたそうだが、ワイマンは退廃的な生活には嫌悪を抱いていた。そこで彼は、心安らぐ場所を求めてパリ、モンテカルロ、スペインにスウェーデンとドライブをしたのだそうだ。

ここで、シトロエンSMが登場する。イギリスの有名バンドがフランスに渡り、現地の車ディーラーが大人しくしているわけがないのだ。彼らのもとには数台の新車を持って売りにくるディーラーたちがいた。



"1971年の4月のはじめにグリースに移ったんだ"とビルはまだ少し残っているサウスロンドン訛りで想起する。"車が必要でね。3,4週間後にある人物がコンタクトを取ってきて、現地のディーラーが私たちみんなの家に訪ねてきたんだ。持ってきた車はすべて見たよ。何を持ってきていたかはちゃんと思い出せないんだけど、ポルシェを試してみたんだ。でも、全然好きじゃなくてね。シトロエンSMを見た瞬間、これだ!と思ったよ。宇宙船のような見た目に一目惚れしたんだ。それからエンジンを見せてくれたんだけど、それも素晴らしかった。ヘッドライトにも驚かされたね。完全に恋に落ちたわけさ"

ミック・ジャガーは所有していたメルセデスをイギリスから持ち込み、キースはベントレーに乗っていた。ミック・テイラーは車を何も持っていなかった。ドラマーのチャーリー・ワッツもシトロエンSMを選んだそうだが、一度も運転しなかったそうだ。"そりゃそうだよ。だって、チャーリーはいつもこのSMに乗って私の運転で移動していたからね!"とビルは言う。"後々、SMを売ってほしいと頼んだんだ。そしたら、なぜ?と聞かれてね。予備用に、って答えたよ。そしたら、絶対に買わせるもんか!と言われたさ。"

ビルは笑いながらこの話をしてくれた。そして、話はブルースミュージック、彼の家の歴史、写真やフットボールにまで至った。すべてにおいて彼は情熱を持っているのだ。この家がどんな歴史を持っているのか細かなところまで調べたり、素晴らしいブルースミュージシャンと友人になったり。車に関しては、車自体のことより車と彼がどのように時間を共にしてきたのかということのほうが重要だ。

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