フォルクスワーゲン タイプ2|レトロデザインで人気の「ワーゲンバス」の歴史を振り返る

フォルクスワーゲン タイプ2



期待すべきは、真の後継車
2003年に登場したT5は、さらに大型かつ淡泊になり、商用のバンと乗用のカラベルとに二分された。ハノーファー近郊に新たな工場が建設され、初のVW純正キャンピングカーである"カリフォルニア"も登場。休日をアウトドアで過ごすには少々高額な選択だが、堅調な売れ行きを保っている。ただ、最初のキャンピングカーとはその"精神"が異なっているように思える。T3のキャンピングカーを所有する私の兄弟はこう言っている。

「こういう車は、労働者階級の男が家族を休日に連れていけるようにできていたはずだ。それなのに、いま5万ポンドも払わなきゃならないなんて、ちょっと買い手を間違って見ているのじゃないか」と。

T4とT5が、リアエンジンだった頃のタイプ2と同じようには人々の心をつかめないことは自明の理だろう。いまは古いモデルへの需要は高まる一方だ。それは夏を西南イングランドで過ごそうと走る車の中に、古いタイプ2が何台いるかを数えればすぐに分かる。以前は、フロントが2枚ガラスのT1はガラス1枚につき1000ポンドの値が付くと言われていたものだが、今やその価格が2倍にも届く勢いだ。VWもこの事実を暗に認め、古い空冷式タイプ2に回帰しようと試みてはいる。しかし、それは掻こうにも手が届かないもどかしさとでも言おうか。

2001年のマイクロバス・コンセプトも当初は量産されるはずだったが結局中止され、その10年後の2011年にブリー・コンセプトが発表されている。愛嬌では少々劣るものの、より引き締まって量産に近い形になった。ブリーは量産されるだろうとあちこちで伝えられているが、VWは今も固く口を閉ざしたままだ。

とりあえず今は、タイプ2のイギリスデビュー60周年を祝っておこう。お誕生日おめでとう、タイプ2君。また君のような車にお目にかかれる日が来るのだろうか?

VWは、タイプ2の60周年に60年代風のレトロ広告を作っている。そのコピーは、「自分が命を授かった車を運転するなんて、ちょっと有り得ないことだ」である。確かにそれは言えている。あとは、伝説的なバンにふさわしい真の後継車を造るという勇気ある決断をVWが下してくれるよう祈るのみだ。

サリー州ドーキング近郊にあるデンビーズ・ワイン・エステートに感謝する。国際的な受賞歴のあるワインを生産しているブドウ園で、年間通してほぼ毎日一般に開放されている。www.denbies.co.uk

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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE  原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Andrew English Photography: Jamie Lipman

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