フォルクスワーゲン タイプ2|レトロデザインで人気の「ワーゲンバス」の歴史を振り返る

フォルクスワーゲン タイプ2



Driving the first Transporter
初代タイプ2をドライブする。速くない、スポーティーでない、窓も少ない。それでも、魅力だけはいっぱいに詰まっている

1954年タイプ2 T1のコクピットは、"スパルタン"という言葉では表現できないほどシンプルだ。だが、レバーやスイッチ、ペダルなどが床からにょきにょきと生えている光景を眺めると、何か特別に複雑な操作でも必要なのだろうかと心配になるほど。運転席に漂う無機質な雰囲気は、バンというより昔の芝刈り機に近い。 まず目に入るスイッチは3つだけ。暗いライト、カタツムリ並みに遅いワイパー、6Vゆえに頼りないセルスターターだ。助手席の足元にチョークがあることに気づく。またボディサイドにきれいに開けられたスロットの中には、腕木式方向指示器が隠れていた。フロントパネルに直立している給水管のような太い管がヒーターだ。ほぼ垂直の黒いコラムの上にステアリングが水平に載っかっている。

メーターは速度計しかない。美しいブルーのこのバンは、ドイツから英国へ渡り、そこからオーストラリアに輸出されたものである。彼の地でイギリスのVW広報オフィスが発見し、レストアを決行。リアに大きなエンジンカバーのある"バーンドア"と呼ばれる最初期のモデルだ。最近では広報用車両として静かな余生を送っているが、現役時代は働き者だったに違いない。

走りの印象は「遅い」の一言。1.2リッターエンジンのトルクは太く、2速で人の歩く速さからでも徐々に加速していく。もちろん高速を飛ばすためのマシンではないから、スピードは助走を付けても45mph(72km/h)が精一杯だ。3人が座れるベンチシートは快適とは言えない。リアエンジンのタイプ2すべてに当てはまるが、キャブフォワードなので、ステアリング操作を通常より遅めにする必要がある。

それでも、ハンドリングは確かだし、乗り心地も悪くない。撮影場所(デンビーズ・ワイン・エステート)の未舗装の坂道を難なくこなし、後輪のトラクションも素晴らしかった。日頃仕事でバンを使っている人は、ラジオもエアコンもないなんて…と顔をしかめるだろうが、タイプ2は間違いなく魅力あふれる工業デザインの傑作だった。



エンジンをリアに搭載しているため、トラクションは素晴らしいが、積み降ろしはサイドの開き戸(のちにスライドドアに)で行うことになる。計器は速度計のみで、車内はクレーンの操縦席のような雰囲気

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編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE  原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Andrew English Photography: Jamie Lipman

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