天賦の才能を持つ牧師のアート│クラシックアストンマーティンを描く

Illustrations:Adam Gompertz



「家族ぐるみの付き合いをしている人がケンブリッジのアストン・ディーラーに勤めていて、ある日、タウンズのV8を持ってきたんです。オスカー・インディア(シリーズ4)より前のモデルだと思います。牧師館の車寄せでそれを見た瞬間に、ビビッときました。まさに決定的瞬間でしたね。皆と一緒に乗せてもらって、そりゃあもう感動しましたよ。家に帰ってくると、その人に尋ねました。子どもがよく聞くでしょう。『世界一速い車は何?』って。その人は、ロジャー・ストアーズ(アストンの歴史家)の小さな茶色い本を取り出して、いかにも高級そうなV8ヴァンテージの写真を指さし、『これが加速の一番速いロードカーだよ』と教えてくれたのです。アストンに乗ったばかりで、別のアストンが最速の車だと聞いた私は、子ども心にも魔法にかかったような気持ちでした」

「ニューポートパグネルは家から20マイルほどだったので、ゲー
トから中を覗くためだけによく出掛けたものです。一度、ティックフォード通りの真ん中でヴィクター・ゴーントレット(1980年代の会長)と鉢合わせしましたよ。大学進学のためのデザインプロジェクトでジュニア・アストンをデザインしたときには、ロジャー・ストアーズに本当に世話になりました。膨大な量の知識と写真を分け与えてくれたのです。ずっとあとのことですが、私は1年ほどデズモンド・スネイル(アストンのスペシャリスト)のところで働きました。デズのテスト走行に同乗したときのことはよく覚えています。大々的にモディファイした顧客のDB4に乗り、デズのすごい運転でシルバーストンのコーナーを駆け抜けたら、なんだか敬虔な気持ちになりましたよ」

「おかしな話ですが、2011年に聖職に就いてから、古いアスト
ンマーティンとその特質に関する話で素晴らしい説教ができることが分かったんです。手作業で造られた車には、愛情と技術が詰まっていて、変わることのない特別な価値ある品という印象があります。単なる部品の寄せ集めではなく、人の手で生み出されたものという感じがするのです。だから人に「所有したい、大切にしたい」と思わせるのでしょうね。レストアの過程にも、関わる人であれメカニカル面であれ、インパクトがあるでしょう。私はこういう職業柄、無駄な努力などないと思っています。ひとりひとり全員に救われるべき価値がある。バーンファインドのアストンと同じですよ。車にまつわる大切な思い出は、たいていアストンマーティンに結びつきます。だからアストンマーティンを描くのがこんなに楽しいんでしょうね」

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)  Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Richard Meaden 

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