天賦の才能を持つ牧師のアート│クラシックアストンマーティンを描く

Illustrations:Adam Gompertz



そうそう、作品についても触れなければ。最も影響を受けたアーティストを聞くと、同年代のカーイラストレーターの例に漏れず、ゴンパーツも故ボブ・フリーマンの名前を挙げた。しかし、フリーマンが非常にテクニカルで製図のように精密なスタイルだったのに対し、ゴンパーツは元デザイナーだけあって、車の技術的側面も伝えつつ、よりソフトで流れるような絵画的スタイルを持つ。個性的で美しいアートな作品だ。

「自分のアートを人と分かち合うことも、私が神から授かった創
造性の一部だと思います。絵の注文を通して人と知り合うのは楽しいですよ。その車を所有する中で経験したことや、車のヒストリーについて話を聞くのも大好きです。とりわけアストンマーティンではそうですね」

「私にとって車のスケッチは、運転の次に楽しいことです。スケッチする対象の車がなんであれ、その本質を捉えたいのですが、
ありきたりなアングルを選ばないように心がけています。じっくり車を眺めるのが好きで、写真もたくさん撮ります。とはいえ、写真のようにリアルな絵にしようとは思いません。デザインスケッチの勢いや創造性が好きなんです。独特のエネルギーと自由がありますからね」

「私は主にボールペンで描きます。デザイナーはボールペンを使う人が多いですね。均一できれいな線が引けるからです。私のとっておきのペンは、ビック社の"クリスタルグリップ" です(と、おどけた声で安物のボールペンを挙げた)。ボールペンを長く使ううちに、陰影や線の強さを調節できるようになります。紙とペンに優しくすれば、薄い柔らかな陰も作り出せるし、指でこすって陰をぼかすことだってできますよ」

「全体の形をスケッチし終えて輪郭が固まったら、さらに細かく書き込みたい部分は濃くしていきますが、他の部分は薄くして想像に任せます。輪郭が決まったら、等高線のようなラインを入れて表面の形を強調します。木型の骨組みのような役割ですね。木型には息を飲むような美しさがあると思うので、そうした線を作品の中に残すようにしているのです。2次元の作品に3次元のパワーを持ち込めますからね」

「満足のいくスケッチに仕上がったら、一般的なデザイン用マー
カーを使って少し色をつけ、ボディのキーになる部分を際立たせます。マーカーは水分が多いので、その気になれば水彩のような効果も出せますよ。ここでようやくパステルを取り出して、こすったりナイフで削ったりして山ほど粉にします。パステルを和らげるためにベビーパウダーを少し加えて混ぜ合わせたら、コットンボールを使って浮き立たせたい部分にパステルを乗せます。次に、消しゴムでパステルに細かなハイライトを入れます。私は層を重ねるように進めていきます。一層ごとに定着剤をスプレーし、色を徐々に強めていきます」



今のところREVSアートは副業のようなものだ。芸術家は皆そうだが、ゴンパーツも好きだから絵を描く。しかし、作品に対する関心が高まってきたので、注文も請け負うようになった。とはいえ、自分のアートも、それを含むREVSプロジェクトも、教会とクラシックカーコミュニティの双方に長く寄与するものになればとゴンパーツは考えている。

「リッチフィールドでのカーショーや、その後関わったホープ・
クラシックカーラリーなどからも分かるように、教会とクラシックカーコミュニティはうまく手を結ぶことができます。私の最大の夢は、いつか古い整備工場かガレージを買い取り、すっかり改装して、カークラブやエンスージアストがくつろげるコミュニティセンターを作ることです」

「ヒントになったのは、ロンドンの"バイクシェッド" や"エー
スカフェ" です。牧師が説教をしたりはしませんよ。それでは人が寄りつきませんからね。私が考えているのは、どうすれば教会が継続的かつ魅力的な方法でクラシックカーコミュニティに貢献できるかということです。私自身が車を愛していることで、真剣さや誠実さがエンスージアストにも伝わるといいのですが。REVSをカフェとして運営し、休憩所や拠点として利用してもらって、それをもてなす中心的役割をキリスト教コミュニティが果たす。つまり、教会の新しい形です」
 
ゴンパーツは実に興味深い人物だ。多面的な飾らない人柄で人
を惹きつける。刺激的で、温かく、ユニーク。彼のアートと同じだ。そして、車をこよなく愛している。そう、私たちと同じように。

「こんなことを言うと奇妙に思う人もいるでしょうが、素敵なクラシックカーでドライブを楽しむと、少し神に近づけたような気がするのです。その車がアストンマーティンだったら、これ以上いうことはありません」

まったくもって同感だ。神のご加護を。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)  Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Richard Meaden 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事