「王女たちのラリー」は 明るく、お茶目で、過酷で、華やか。

Photography: Tomonari SAKURAI, Shiro HORIE

女性がハンドルを握る。助手席の女性がコマ地図を見ながら指示を出す。フランスで開催されるラリー・デ・プランセスは、最もハードで華やかな、車を愛する女性のための素晴らしい祭典である。

2019年6月。フランスで開催されてきた、女性だけのクラシックカーラリーが20年目を迎えた。フランスの最も美しい地域を旅しなが
ら困難を乗り越え、5日間で計1600㎞もの道のりを走り抜く。このイベントのキャッチである「Treat your self」とは「自分への褒美」という意味。ラリー・デ・プランセスは、この精神に基づいて、女性と自動車との情熱にスポットライトに当てて展開されている。毎年の参加上限は招待客を除いて90 台と180 人。

募集開始と同時に、いっぱいになるほどの人気ぶりだ。多くはフランスからのエントリーだが、ベルギーや英国、イタリアなどからの参加者も目立つ。このイベント発案者であり主催者はヴィヴィアン・ザニロリ。参加者からは母のように慕われていて、スタートとゴール、すべてのポディウムにはドライバーたちを温かく見守る彼女の姿がある。「1999年にプリンセスラリーを設立したことにより、女性が美しい車を愛していることを証明できたことを私は誇りに思います」と語る。
 
この企画は1929年に開催された女性のためのラリー「パリ・サン・ラファエル・フェミニン」にインスピレーションを受けている。そのルートは、パリ、ヴィシー、リヨン、アヴィニョン、ミラマス、ラ・シオタ、イエール、サンラファエルまでの1087kmを5日間で走るというもの。自由や洗練を愛する特別な階級の女性だけが楽しめていたモータースポーツのオリジンを、現代風に忠実に再現しているのだ。したがって、この競技が設立されてから大事にしてきたのは、日中の美しいスポーツ走行と楽しい夜の舞台とのバランス。



クラシックカーでタイトなワインディングを毎日300㎞も運転するには、当然のことながら正しい休息が必要。主催者はさわやかな空間でのランチや、パッショネートされた夜のディナーの演出に特に注意を払うという。「参加するすべての女性が大胆さと闘争心を兼ね備えていて、生き生きとした喜びを表現する能力は、尊敬と賞賛の両方をもたらします」とヴィヴィアンは楽しそうに話してくれた。

朝8時過ぎから、多くのクラシックカーが車検のために集う。自走から大型のトランスポーターまでさまざま。受付を済ますと、ゼッケンなどの貼付やGPSの装着はすべてベテラン男性スタッフが行ってくれる。方向指示器、灯火類、ホーンなどのチェックを行う。ちなみにこのラリー・デ・プランセスでは。PC競技(いわゆる「線踏み」)は行わない。各車ストップウォッチ類は用意しており、ルートには何か所もタイムアタックステージがあるが、そのすべてをGPS による計測のみでジャッジする。車検終了後は車両が保全され乗り出しはできない。


 
17時半には多くの参加者はカジュアルなドレスを身にまとい、パビリオンヴァンドームのグランドサロンに再び集まってくる。オープニングカクテルでは、この競技の圧倒的理解者でもあるリシャール・ミルが会場に駆け付けて、この20 周年祝いのキックオフがされた。

文:堀江史朗(オクタン日本版編集部) 写真:櫻井朋成、堀江史朗 Words: Shiro HORIE (Octane Japan) Photography: Tomonari SAKURAI, Shiro HORIE

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