フェラーリが生んだ歴代スーパーカーを一気に試乗│F40 LM、F50、エンツォにラ フェラーリ

Photography:Matthew Howell


 
エンツォの後継モデルには300bhpのパワーアップが必要。そう決まったマラネロでの会
議に出席できたら、さぞ面白かっただろう。この決定の裏には、外的要因もあったのではないだろうか。マクラーレンP1が916bhp、ポルシェ918が893bhpだったからだ。こうして、エンツォが登場して10年余りが過ぎた2013年に、フェラーリは963bhpのラ フェラーリを発表した。
 
朗報は、心臓部がエンツォのV12エンジンの進化版だったことだ。6.3リッターに拡大されて、強
大な800bhpものパワーを発生する。そこに120kw(163bhp)の電気エネルギーがKERS(運動エネルギー回生システム)によって上乗せされ、9000rpmで963bhpという衝撃的な数値に至る仕組みだ。ラ フェラーリは最も軽い仕様で1480kg。エンツォから100kg強の増加だが、KERSとそのバッテリー、巨大なダブルクラッチ・ギアボックスの重量を考えれば大したものだ。
 
キーを握ってラ フェラーリに歩み寄ると、自然に鼓動が高まる。感情のカクテルは、不
安2に対して興奮も2の割合だ。価値は約200万ポンド。パワー・ウエイトレシオは、あの弾丸のようなF40 LMをも上回る。少なくともスタビリティコントロールとABSがある…と自分にいい聞かせた。バタフライドアをリリースすると、スリムなカーボンファイバー製タブまでに、さらに30cmほどのアスファルトが現れた。アルカンターラのバケットシートに腰を下ろし、シートをペダルに近づけようと調整ハンドルを引くと、思いがけずペダルのほうが滑らかに近づいてきた。
 
目の前のステアリングはエンツォの進化版である。マネッティーノを備え、なんとリム
が四角形だ。これは意外だった。ちょうどデジタルのインストゥルメントパネルを縁取る形だ。おそらくステアリングレシオが非常にクイックで、ロック・トゥ・ロックも小さいのだろう。V12に点火すると、そのバリトンに負けじと、フィーン、ブーンといった様々な音も加わる。深呼吸して、発進。
 
率直にいおう。ラ フェラーリのドライブは簡単だ。快適で、前方の視界も良好(バック
ミラーでは道路よりエンジンのほうがよく見えるが)。ステアリングは重みがちょうどよく、落ち着いたレスポンスで、位置も中央寄りだ。ギアボックスは出しゃばらず、執事のように礼儀正しい。くぼみもバンプもタイヤの下に音もなく消える。ムードを壊すのはブレーキだけで、足に伝わる感触がいくぶん不安定だ。おそらく電気エネルギーの回生装置と通常の油圧装置が制動を分担しているせいだろう。そして、スロットルペダルを軽い気持ちでふっと踏んだだけで、即座に途轍もないパワーが湧き出す。これにはショックを受けた。
 
私は何らかの前段階があると思っていたのだ。これぞKERSの成せる技である。フェラ
ーリは電気モーター特有の瞬時の反応を利用して、スロットルレスポンスをさらに鋭くし、V12の低回転域のトルクを増強した。その効果は絶大で、トルクデリバリーの歯切れの良さは現実離れしている。時折、トラクションコントロールの手助けをうっすらと感じるものの、メカニカルグリップが大きいのも間違いない。


 
踏み続けると、巨大なV12はすぐに本領を発揮し、推進力がどんどん高まって、目も眩
むような次元に達する。まるで漫画の世界だ。信じられない。ラ フェラーリに本気を出させたら、その実力は壮大で容赦がない。ギアボックスも驚異的で、9000rpmでシフトアップしても、加速の奔流が途切れることなく続く。このパフォーマンスをどこまで維持できるのか見てみたくてたまらないが、ここでやるべきことではないと自分を抑えた。ラ フェラーリは驚くべき偉業であり、圧倒的なエンジニアリングの傑作だ。残る疑問はただひとつ。次には、いったいどんなものが現れるのだろうか…。
 
試乗した8台からベストを選ぶのは、自分の子どもの中からお気に入りを選べというの
と同じだ。それでもやってみることにしよう。希少性とルックスと日常的な使いやすさでは288 GTOが、特別感と意外にもパワーを生かしやすい点ではワイルドなF40が私は気に入った。レーシングカーのLMは、私が公道でドライブした中で最も爆発的にパワフルな車であり、その不条理は好きにならずにいられない。
 
エンツォは年月と共にワイルドな魅力を増している。複雑な走る彫刻であり、パワフル
なV12は実に個性豊かで、決して飽きることがないだろう。ラ フェラーリはそれを新次元にまで高めた。だが私には、予想に反して新しいお気に入りができた。それはF50だ。今もあのルックスは愛せないが、あとはすべてが揃っている。極上の音色を奏で、パワーを容易に引き出せるスリリングなV12エンジン。完璧なマニュアルシフトと抜群のステアリング。チャンスさえあれば200mphを追い求めたくなるダイナミクス。あるいは、ただのんびり走って楽しむだけでいい、そんな気持ちになる車なのである。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:John Barker 

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