伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナの非凡な才能が理解できる5つのレース

アイルトン・セナ、1994年シーズン開幕時の写真。ウィリアムズに移籍したセナはさまざまな思いを抱えていた



5 最も偉大な勝利
1993年4月11日/ヨーロッパGP(ドニントンパーク、英国) マクラーレン・フォードMP4/8
セナが成し遂げた41勝の中でも、ドニントンパークで開催されたヨーロッパGPでの優勝ほど語り種となっているものはない。マクラーレン・フォードMP4/8の最初のテストでは楽観的な態度を見せていたものの、セナは1993年に大きな困難が待ち受けていることを覚悟していた。母国グランプリではさまざまな要素に助けられたが、ドライのドニントンでは、予選で再びウィリアムズの2人に及ばず、プロストには1.55秒という決定的な差をつけられた。その上、同じフォードエンジンを積んだベネトンのミハエル・シューマッハーにも初めて後塵を拝している。

だが決勝は雨となり、グリップをつかむ感覚に定評のあったセナは一気に優勝候補となった。ただし、路面が乾き切る前に充分なマージンを築かなければ、プロストを抑え切ることは不可能だ。グリッドにつくセナも、クッションを築き上げる時間はそれほどないかもしれないと分かっていた。サーキットは部分的に乾きつつあり、ザウバーのJ.J.レートは早くもスリックタイヤでのピットスタートを選択した。

セナは2列目の左側からのスタトは完璧ではなく、第1コナの"レッドゲート"までの間にインからザウバーのカール・ヴェンドリンガーに抜かれる。さらにアウトから進入しようとしていたところをシューマッハーによってさらに外へ押しやられるが、すぐさま反対側に振ってシューマッハーのインへ飛び込んだ。レッドゲートの立ち上がりでは、トラクション・コントロルという武器を持つセナがやすやすと前に出た。

次のクレイナ・カブで、セナはヴェンドリンガーのアウト側を回り込むと、続くオルドヘアピンでインを取って3位に浮上する。前を走るウィリアムズ2台もトラクション・コントロールを備えていたが、ウェットでの技量と執念ではセナが勝っていた。ヒルは、次の右コーナー"マクリンズ"で、自分の右側に突如現れたマクラーレンに意表を突かれ、なすすべもなかった。そして迎えたメルボルンヘアピン。イン側に飛び込んだセナはブレキングを遅らせ、一度小さくマシンを振るとプロストまでも抜き去ったのだ。こうして、1周目を終えて戻ってきたセナはトップでホームストレートを駆け抜けた。

その後、セナを視界に捉えた者はいなかった。降ったり止んだりの天気が続き、プロストはなんと7回ものタイヤ交換を行い、1周遅れの3位に終わり、フランスのメディアから叩かれることとなる。チェッカーが振られたとき、ヒルのウィリアムズに対してセナが築いていたマージンは、実に1分23秒にもおよんだ。


ドニントンでのヨロッパGPの1周目は、卓越したセナの力量を象徴する場面として今もよく語られる。1コーナのレッドゲートでは5番手だったが、クレイナ・カブまでに3位に上がり、オープニングラップをトップで戻ってきた。雨が断続的に降るコンディションの中、セナは90秒近い大差をつけてヨーロッパGPで勝利した

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編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 
原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Photography: sutton-images.com

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