ドナルド・ヒーレーが使用した個人的なアイテムの思い出

Photography:Jason Fong





ドナルドとジョフリーの対照的な面がもうひとつある。それは、ドナルドが過去との決別に前向きだったのに対し、ジョフリーはヒーレー家の"遺産"の保護に熱心だったことだ。ジェンセン・ヒーレーが頓挫し、事業を売却したドナルドは、引退して故郷のコーンウォールに引き揚げると、ウォリックのショールームや製図室に残された貴重な品々を大量に処分することにした。だが、ジョフリーは多くの品を廃棄処分から救い出した。このゴーグルの詰まった箱もそのひとつだ。ケイトたちは、これを古いチェストの引き出しで見つけた。「いくつかはボンネビルで使ったものに違いないわ。父は人に聞かれると、一番の思い出はユタだと答えていたから」

典型的な英国紳士のジョフリーだが、意外にもビーチ・ボーイズの大ファンだった。セブリング(スティーブ・マックイーンがヒーレーをドライブしたこともある)から持ち帰ったのが、アルバム『ペット・サウンズ』だ。これがヒーレー家最初のステレオレコードとなり、ウォリックシャーの片田舎で延々とかけられていたという。また、ジョフリーはスーツケースに「素敵なフロリダスタイルの服」を詰めて持ち帰り、お下がりを普段着にしていたケイトは、それを喜んで着たという。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)  Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words:Martin Gurdon 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事