完璧にレストアされた最高にエキゾチックな1台│強烈で肉体的なドライビング体験

Photography:Tim Andrew



ソーンリー・ケラムとガイ・ベリーマンは似た者同士だ。
「たとえ外から見えなくても、ディテールまで全部、オリジナルとまったく同じでなければ気が済まないんだ」とガイは話す。ソーンリー・ケラムは、最近大きな成功を収めた。ランチア・アウレリア・"アウトロー"が注目を浴びたのだ。低いルーフラインや、燃料噴射式のフラミニアのエンジンなど、モディファイを加えたモデルである(オクタン日本版18号で紹介)。しかし、今も主な仕事は純粋なレストレーションであり、その品質の高さはガイの厳しい基準も満たす。

ウェイン・ケラムは次のように説明した。「ビッザリーニ・プロジェクトは、出発点が非常に恵まれていました。概して不足したパーツがなく、手が加えられていない車だったのです。私たちは、既に用意してあった様々な本とつき合わせて、細部まですべて見た目どおり本物か確認しました」

見通しは明るかったが、レストアは何ひとつおろそかにせず慎重に進められた。「あれ以上バラバラにはできないでしょうね」とウェインは笑う。「スチールのフレームをアルミニウムパネルで覆ったこうした構造の車の場合、4000 ~4500時間、1年半~2年ほどかかります」

まずはプロのカメラマンによる"ビフォー"の写真撮影をしてから、分解してパーツの目録を作り、必要に応じて委託業者の選定を行う。それが済んで初めてレストアとリビルドが始まるのだ。今回の場合、通常は社内で行う板金加工をGPパネルクラフト社のギャリー・ピットニーに託した。



ベアメタルにしてからの再塗装には800時間を費やしたが、こうした丹念な作業の真価は、長い時間をかけて明らかになる。サイモン・ソーンリーがこんな話をしていた。「昨年、ペブルビーチに行ったら、ウェインが17年前にペイントした車が出展されていたんですよ。品質の高さと細部へのこだわりこそ、私たちの大きな強みです」

「レストアで直面する課題はケース・バイ・ケースですが、
この車の場合、壁にぶつかることはありませんでした」とウェインは話す。ソーンリー・ケラムが主に扱うランチアやアミルカーの一部に比べれば、比較的順調に進んだ。「厄介だったのはブレーキですね。最終的には、オーナーがこの車を頻繁に使用する予定であることを元に決断を下しました。将来的にもスペアパーツの豊富なユニットを使うことにしたのです」

ダンロップスタイルのブレーキは数少ない仕様変更となった。「それ以外は、オリジナルの仕事を残す最善の方法を探りました。例えば溶接です。トゥーリングやザガートで製造した車と同様、ひどい部分もありました。そうした箇所は補強しましたが、見た目は変えないように気をつけました」

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. )  Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Jethro Bovingdon 

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