BMW CSL バットモービル vs ポルシェ911 カレラ 2.7 RS│ホモロゲ仕様の対決!

Photography:Paul Harmer



ポルシェ911カレラRS2.7も同様にスペシャル・ホモロゲーション仕様で、エンジニアによるソリューションでレースでの成功を収めていた。1965年の911発売から、ポルシェのレース部門はレースとラリー用の強力な車を開発し続けてきた。1966年には、ポルシェ911Sが2リッターの水平対向6気筒エンジンで160bhpを出し、これに乗ったヴィック・エルフォードが1967年のヨーロッパ・ラリー選手権で優勝を果たした。1968年には、この911はGTスポイラーは違法であったため、トランクに入れられて納車された(もちろんオーナーはすぐに取り付けただろう)。スチールのトランクリッドはこのバットモービルでは標準だが、理由はリアウィングのダウンフォースに耐えるためであった。これらの空力デバイスにより、空気抵抗は16%低減され、これは50 bhpのパワー増加に換算できるという。

直列6気筒のエンジンは、3153㏄にまで拡大され、ロードゴーイング仕様は5600rpmで206 bhpを発揮する(レース仕様は360bhp以上)。1973年には、この3.2リッター仕様のロードカーが110台生産され、その後、75年12月に生産中止となるまで、57台が追加生産されたにすぎない。こうした改良の結果、1973年界選手権で優勝し、モンテカルロ・ラリーで初めて3連勝することとなった(1968〜1970年)。

カレラRSのルーツはフェルディナント・ピエヒが手掛けた911Rであった。極端に軽量化を図ったことで重量はたったの800kgに削ぎ落とされ、これに210psを発揮するカレラ6用のエンジンを搭載した。一方でポルシェはロードゴーイングモデルではパワーアップのために排気量の拡大を選んだ。まず2.2リッターとし、911がル・マンで6位入賞しGT世界選手権で再度優勝した1971年には2.4リッターにした。



しかしながら、1972年のホッケンハイムでは、911はBMWばかりかフォードにまで追い抜かれるという屈辱に見舞われた。その解決策は排気量の拡大と軽量化であった。レーシングモデルの製作はたやすいが、ホモロゲーション取得のために500台を生産しても売れる保証がないと、マーケティング部門はこの計画に懐疑的であった。技術部門の最高責任者の任にあったエルンスト・フールマンは、化彼らを説得するのに非常に苦労していたという。

最終的にエンジニア側の意見が通り、カレラと名付けられ限定生産が決まった。カレラの名は356のスポーツ仕様のロードモデルやレンシュポルト仕様のRSに使われた呼称であり、デザイナーのアナトール・ラピーヌが、独特の"Carrera"のロゴを両サイド下部に配し、グランプリ・ホワイトの塗色がRSのオフィシャルカラーとなった。最初のロードゴーイングモデルのカレラRSは、1972年冬に納車され、公式には911SCとして知られている。それは、この車が完全な新型モデルではなく、当時の911Sの仕様違いモデルであることを明らかにするためであった。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:東屋 彦丸 Translation:Hicomaru AZUMAYA Words:Robert Coucher 

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