美しい街並みとワイン、食...シトロエンDSで走るフランス・アルザス地方への旅

Photography:Martyn Goddard



丸石が敷き詰められたリクヴィールの中世そのままの通りを歩いてみると、ここがフランスで最も美しい村に選ばれたことがよく理解できる。私たちはエティエンヌ・ヒューゲルに会うためにヒューゲル・エ・フィス社のワインセラーに向かった。ヒューゲル家は12世代にわたってワイン作りを家業として受け継いできたが、その間、フランスからドイツへ、またその逆にと少なくとも6回国籍が変わったという。エティエンヌは私たちと一緒にDSに乗って地元のブドウ畑を巡りながら、アミ6、GS、DS19が2台、そしてCX GTIという自らが所有したシトロエンの思い出を話してくれた。DSは南向きのブドウ畑の作業路を進み、街を見下ろす高台へ出た。彼が指し示した25ヘクタールの畑は、すべてグランクリュ・クオリティのワインを生み出すブドウが植えられているという。

街に戻ると、手摘みされたブドウで溢れんばかりの黄色の収穫箱を運ぶ作業で大わらわだった。私たちは素晴らしいヴィンテージだった2009年のゲヴュルツトラミネールを味わうためにセラーに戻った。傍らには"サント・カトリーヌ"という名で知られる世界最古のワインの大桶があり、しかもこの桶は1715年からずっと使われ、今なお現役だという。セラーにはこの会社と英国との結びつきを示すものが飾られていた。たとえばサヴォイ・ホテルからの最初の注文書や、第二次大戦の終戦後、ヒューゲル家が12本のボトルを贈ったことに対するウィンストン・チャーチルからの感謝の手紙である。英国は今も重要なマーケットなのである。

ワインボトル数本分重くなったDSは、賢いサスペンションのおかげでフラットさを保ちながら、陽が落ちた道をカイゼルスベールのホテル・シャンバールへ急いだ。このホテル・シャンバールにはオリヴィエ・ナスティがシェフを務めるミシュラン二つ星の"64レストラン"がある。様々な料理を少しずつ味わうデギュスタシオン・メニューは133ユーロだったので、自分たちの財布を眺めて近くのレストランに向かうことにしたが、その"ウィンストゥブ・デュ・シャンバール"の心温まる地元アルザス料理、私の場合シュークルートとリースリングもとても素晴らしいものだった。

このワイン街道の魅力は狭い地域に数え切れないほど訪れるべき名所が詰まっていることだ。私たちの旅の最後の行程は"Cite de l’Automobile Mus.e National CollectionSchlumpf"(シテ・ド・ロトモビル・ミュゼ・ナシオナル・コレクシオン・シュルンプ)へ至るものである。かつてのシュルンプ・コレクションは今やこれほどに長い正式名称を持つが、それに相応しい世界最大の国立自動車博物館である。以前に訪れたのは1987年のことだったから、新しい建物を見るのを楽しみにしていた。実際、今では橋を越えたところに、実物大の車のオブジェが床から天井までディスプレイされた壮大なエントランスがある。

編集翻訳:高平 高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words and photography:Martyn Goddard

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事