8台のポルシェ911とともにその半世紀におよぶ歴史を振り返る旅

Photography:Andy Morgan


 
993は、私がフルラインナップでテストするようになった最初の911だ。カレラからGT2に至るまで、様々なモデルの比較テストを行ったことを思い出す。ルックスもいい。その優雅な曲線は、996以降の911で失われてしまったもののひとつといえる。
 
996の後で乗ると、ウィンドウスクリーンがやけに近くて直立していることや、ボディがコンパクトなこと、そしてインテリア・デザインやスイッチ類がひと昔前の世代であることを思い知らされる。空冷エンジンは、水冷とは比較にならないほど個性的で、ブーンブーンやゴロゴロゴロといった様々なサウンドを奏でる。ただし、268bhpのパワーでは996に太刀打ちできない。試乗車のコンディションは極めて良好だったが、それでも車の反応はややあいまいなもので、人間の記憶がいかに不正確であるかを思い知らされる。別に993が思い通りに走ってくれないと嘆いているわけではない。ただ、最新モデルとはちょっと異なるスタイルのドライビングが必要になることは間違いない。
 
かつて雑誌の企画で中古の993カレラと暮らしていた経験のあるボヴィンドンも複雑な表情を浮かべていた。「エンジン・サウンドは紛れもなく空冷のもの。これを聞くと964が古くさく、そしてありきたりに思えてくるけれど、確信は持てない。個人的には、996よりもステアリング・フィールは薄くなっているような気がする。スロットル・レスポンスも鋭いとは言いがたいし、水冷モデルに比べるとステアリングの正確さも物足りない。ブレーキ、ギアシフト、そして外観は好みだ。でも、自分で欲しいと思うところには到達していない」

編集翻訳:大谷 達也  Transcreation: Tatsuya OTANI Words:John Simister 

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