BMW歴代のデザイナーたちが描いた貴重なスケッチ19枚

すべてはスケッチから始まる(Photography:Daniel Kraus)



未来からやってきた
最上のドライビング・マシン

「ドライバーが望むときには自分で運転できる」これがBMWの考える自動運転である。ビジョン・ネクスト100は自動車の未来を示しているが、そのデザインは伝統的な手法から生み出されたものだ。

過去から現在、そして未来へ。いまから10年後の車さえそのデザインを想像するのは難しいのだから、100年後のことなど論外である。もっとも、ビジョン・ネクスト100は100年後の車を示したものではないとファン・ホーイドンクは語る。「20年後ないし30年後を念頭に置きました」と。ただし、運転の操作に用いるものはステアリングとペダル類くらいしか見当たらない。古式ゆかしいメーターパネルなどは、不要なときは目に触れないように隠されているのだ。

それらが姿を現すとき、ステアリングは"ホイール"ではなく水平に配置された"バー"とハンドグリップの組み合わせに変化する。最新のコンセプトカーは大半がそうであるように、ビジョン・ネクストも自動運転が可能だが、これまでどおりドライバーが操縦することもできる。つまり、BMWは今後も「最上のドライビング・マシン」を創り続けていくつもりなのだ。

自動運転の未来を確信しているBMWにとって、重要なのは「自動運転が実用化されるかどうか?」ではなく「いつ商品化されるか?」にある。ドライバーは依然として集中していることが求められるものの、車は常時ネットに接続されて様々な情報をやりとりし、最新鋭のシステムがドライビングをサポートする。EVであるがゆえ、フロントグリルのキドニー・グリルはもはや吸気の取り入れ口ではなくなり、代わりにいくつものセンサーがなかに設置されるが、ブランドのトレードマークとしてそこに有り続けることだろう(写真 [1])。

BMWでは、ネクスト100の自動運転モードを"イーズ"("安らぎ"の意味)と名付けている。この場合、乗員はネット接続されたキャビンのなかでゆったりと寛ぐことができる(写真 [2])。寝ることさえ不可能ではないだろう。いっぽう、たとえばワインディングロードでドライバーが運転の主導権を握っているときは"ブースト"モードとなる。

さらに難解なのは"アライブ・テクノロジー"と呼ばれるもので、これによりボディワークの一部が必要に応じて伸縮する。また、バブル形状のウィンドウスクリーンは巨大なヘッドアップ・ディスプレイとしても機能し(写真 [3])、道路に潜んだ危険を知らせるといった役割を果たす。ファン・ホーイドンクはこれを「知る必要があるものだけを表示する機能」と呼ぶ。

未来の車といって差し支えないだろう。しかし、このネクスト100もまた1枚のレンダリングから作り出されたのである。およそ60年前に507が生まれたのと同じように…。



編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Richard Bremner Photography:Daniel Kraus

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